有料特急のような片側2ドア車で座席が進行方向を向いたクロスシート――。京浜急行電鉄のフラッグシップ車両「2100形」は、大手私鉄のなかでも独自路線をいく。
窓を背にしたロングシートが一般的な通勤車両に比べ混雑時の乗り降りに時間がかかる、窓側に座ると通路に出るのに隣の乗客に気を使う、などと短距離の利用には不向きかもしれない。が、日常の移動の中でちょっとリッチな旅行気分が味わえる2ドア・クロスシート車両は、わざわざ選んで乗りたくなる特別感がある。現在、大手私鉄で乗車券のみで乗れるのは、優等列車では京阪電気鉄道の「8000系」くらいしかない。
クロスシートの本領発揮
混雑率が高めの首都圏の通勤電車に向いていないのは確かだが、朝晩のラッシュ時間帯には有料座席指定列車として本領を発揮する。上大岡―品川間をノンストップで走り、横浜にも停車しない上り「モーニング・ウィング号」や下り「イブニング・ウィング号」として活躍する。
それ以外は乗車券だけで利用できる。通常の営業列車では相互直通運転をする都営浅草線に乗り入れることはない。そのため2100形は京急線の北端の泉岳寺を発着駅とする列車に使用されることが多い。上り列車には「品川方面泉岳寺」と行き先が表示される。
平日の日中は泉岳寺―京急久里浜間、土休日は泉岳寺―三崎口間で運用する。ドア間の座席は常に進行方向を向いた転換クロスシート。乗客が自分で回転させることはできない仕様で、終着駅の京急久里浜や三崎口では座席が一斉に方向を変える様子を車外から眺めることができる。
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