下りのサザンの場合、途中停車駅は新今宮、天下茶屋、堺、岸和田、泉佐野、尾崎、みさき公園、和歌山大学前(ふじと台)。みさき公園駅近くは海を望む区間で、同駅からは2.6kmの単線、多奈川線が分かれる。
2012年に開業した和歌山大学前の周辺にはニュータウンの「ふじと台」やイオンモール和歌山がある。近年建て替えられた駅ビルが新たな街のシンボルとなった和歌山市駅は2023年に開業120年を迎えた。加太線(加太さかな線)の「めでたいでんしゃ」も発着する。
サザンの一部列車は和歌山市から和歌山港線に直通し、四国の徳島と結ぶ鉄道連絡船、南海フェリーに接続する。和歌山港線は家々の軒先を縫うように走る区間もある2.8kmの単線だ。とくに1998年に明石海峡大橋が開通するまでは本州と四国を結ぶ重要な交通手段の1つだった。
10000系は1985年にデビュー
10000系のサザンは1985年11月1日、特急「四国号」の後継として登場した。「南海線に座席指定特急『サザン』8両新造投入」と題した9月30日付けの同社広報資料によると、サザンの愛称は「開けゆく『みなみ』の方向性と、21世紀に向かう将来性をネーミングした」。当時の座席指定料金は400円。「新特急の運転は、座席確保、上級車両への旅客のニーズに応えて、快適な輸送サービスを提供する」といい、着席需要の取り込みを意識していたことがわかる。
1986年、鉄道友の会の「ローレル賞」に選ばれた。同会は「貫通式扉を設けた前面デザインは大きな曲面ガラスの採用によってひときわ斬新な印象」、「室内装備も豪華で特急列車の条件を満たしてくれています」と評価。「民鉄としては初の、国鉄のグリーン車的扱いをしていることも特徴の一つ」と選定理由を挙げた。
南海電鉄の車両としては初めての受賞。東海道・山陽新幹線の「100系新幹線電車」と並んでローレル賞に選出されており、当時の好評ぶりがうかがえる。同年の最優秀「ブルーリボン賞」は伊豆急行の「2100系電車(リゾート21)」だった。
10000系は当初2両固定編成が4本製造された。自由席4両と連結、または4両・6両の全車両座席指定特急として運用。選抜された運転士・車掌だけが乗務に就くことができたという。1989年にかけて2両編成6本を増備した。
さらに1992年、改造・新造により中間車(2・3号車)を組み入れ4両編成7本とした。このため新造車両を入れた編成は、車内設備や側面の窓の形状などが和歌山市方の1号車、なんば方の4号車と異なる。その当時の車両紹介資料には「利用客が多く、満席の列車も多いため、今回中間車両を増備新造し、座席数の増強を行うことにした」とある。
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