陸自3人死傷の銃撃事件から見える装備の貧弱さ 有事になれば他国の軍隊の何倍も戦死者を出す

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負傷した際の応急処置をする個々の隊員が携行する「個人携行衛生品」、ファーストエイドキットも包帯、止血帯が各1個という粗末なものだったが、筆者が告発して改善されている。それでも十分とは言えず、また止血帯は、訓練用止血帯による訓練もほとんど行われていない。部隊の医官の充足率は2割強にすぎず、師団、旅団、連隊レベルでも十分な応急手当てを受けられるか大変怪しい。

アメリカ陸軍のIFAK II(写真:アメリカ陸軍)

ヒートマネジメントの点では背負式のポリマー式の水筒、ハイドレーションも必要不可欠な装備と認識されている。これはトライアスロンなどでも使用されているが、容量が2~3リットルと大きく、チューブからこまめに水分補給ができるというメリットがある。

背負式のため通常の水筒のように腰回りの装備に干渉しないというメリットがある。さらに負傷時には傷口を洗うことにも利用できる。すでに途上国でも標準装備となりつつあるが、陸自では特殊部隊や水陸機動団など一部の部隊にしか装備されていない。

このような個人装備の不備を放置したまま有事ともなれば多くの隊員が本来失う必要がない生命を失うことになる。

6月20日の防衛大臣定例会見で、筆者はこのような防弾装備の不備について述べ、浜田防衛大臣に「18式防弾ベスト」を本年度の補正予算、あるいは来年度予算で前倒し発注し、速やかに全隊員に行き渡るようにする気はあるか尋ねたが、今回の衝撃的な銃撃事件があった後でも明快な回答はなかった。はたして防衛省や自衛隊がどれだけ真剣に有事を憂いているのか大変心配である。

「何で銃で撃つんですか!」と抗議

国産防弾装備の性能には疑問がある。イラク派遣に備えて防弾ベスト改良に関わっていた元隊員によれば、改良された防弾チョッキのプレートの防弾性が低く、小銃でブスブスと抜けた。担当者がメーカーに抗議すると「何で銃で撃つんですか!」と抗議されたという笑えない話がある。

実戦はもとより、社会においても銃撃事件が希有なわが国では防弾装備の開発は難しい。防弾装備が本当に機能するか、検証が必要だ。

陸自は普通科の装備を蔑ろにして、見栄えのいい戦車などの調達を優先してきた。

ソ連が崩壊し、今世紀に入って、わが国が想定する侵略は大規模な敵の着上陸作戦ではなく、ゲリラ・コマンド(特殊部隊)による破壊工作、島嶼における限定的な侵攻、さらに加えれば弾道弾による攻撃だ。

つまり敵が師団規模で揚陸して国内で戦車戦を行うということ自体が想定しがたい、と「防衛大綱」でも繰り返してきた。現在のわが国周辺諸国では中国ですらそのような揚陸能力は保持していない。しかもわが国に揚陸するのであれば、周辺の航空優勢、海上優勢を確保する必要がある。それはすなわち、海空自衛隊、在日アメリカ軍が壊滅的なダメージを受けたということになる。

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