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「千と千尋の神隠し」カオナシが突然大抜擢のワケ 最初は単なる脇役だったキャラクターがなぜ?

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鈴木の一言で、宮﨑は『煙突描きのリン』の企画をストップすることを決意。そして続けて、次の企画を切り出した。鈴木はその時の様子を次のように振り返っている。

僕と宮さんの共通の友人の娘を出してきて、その子のための映画をやるって。舞台は、江戸東京たてもの園で。僕は、その女の子もたてもの園も大好きだったんで、賛成せざるをえない。宮さんによって、絶対反対できない状況に置かれたんです(笑)。(『ロマンアルバム 千と千尋の神隠し』)

そして1999年11月2日、宮﨑は企画書を脱稿。6日には演出覚書を書き上げた。そして11月8日には、メインスタッフに向けた説明会を行い、本格的に制作準備がスタートすることになった。

世間の縮図としての「湯屋」

企画書は、『千と千尋の神隠し』のコンセプトが明確に書かれているため、スタッフ向けだけでなくマスコミ向け資料などにもさまざまに掲載された。 

ここで宮﨑は『千と千尋の神隠し』のテーマについて「今日、あいまいになってしまった世の中というもの、あいまいなくせに、侵食し喰い尽くそうとする世の中を、ファンタジーの形を借りて、くっきりと描き出すことが、この映画の主要な課題である」と明確に打ち出している。

そしてその上で「千尋が主人公である資格は、実は喰い尽くされない力にあるといえる。決して、美少女であったり、類まれな心の持ち主だから主人公になるのではない。その点が、この作品の特長であり、だからまた、十歳の女の子達のための映画でもあり得るのである」と記している。

こうして「世の中」の縮図として登場するのが、神々が通う湯屋「油屋」だ。神々が疲れを癒やす湯屋には、湯女や蛙男たちが大勢働いている。

宮﨑は湯屋について「いまの世界として描くには何がいちばんふさわしいかといえば、それは風俗営業だと思うんですよ。日本はすべて風俗営業みたいな社会になっているじゃないですか」(『プレミア日本版』2001年9月号)と語っている。また湯屋で働くカエルたちについても「背広を着ている日本のオジサンたちにソックリでしょう」(『「千と千尋の神隠し」千尋の大冒険』)と説明している。

この湯屋の支配者が湯婆婆。恐ろしい魔女であり、従業員には厳しい経営者であり、かつ息子の「坊」を溺愛する母親でもある。そしてこの世界に紛れ込み両親がブタになってしまった少女、千尋は湯婆婆に名前を奪われ「千」となって、湯屋で働くことになる。

両親が豚になってしまうという衝撃的なシーンが切り取られた『千と千尋の神隠し』の映画ポスター(©2001 Studio Ghibli・NDDTM)

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【「突然カオナシというキャラクターが浮上したんです」】

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