「若者に嫌われる企業」がついやりがちなNG質問 就職差別企業は、採用氷河期を生き残れない

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「尊敬する人物」なども、思想・信条をチェックするという意味ではなく、どのような価値観、思考回路、行動特性を確認するという意味では面接官にとって知りたい項目である。「人生を変えた体験」など、いかにもよくある質問の中で、掘り下げていくということで、確認するという手もある。

このように、不適切質問には抜け道もある。面接官は出自の確認、思想チェックをしたいのではなく、働くうえでの本人の価値観を確認するという意図だったりするのだ。不適切質問にならないような意識と工夫を、面接官側が行っているともいえる。

求職者も不適切質問をわかっていないという問題

ここまで読んできて、読者の反応は大きく2つに分かれるに違いない。「けしからん」「こんな不適切質問が行われているなんて」という立場と、「これの何がいけないの?」という立場に分かれることだろう。そう、不適切質問について悪いと感じない求職者もいるのではないか。

実際、今回の連合の調査でもその点は明らかだった。各項目をみてみよう。

求職者が「不適切だと感じている割合」は次のとおりだった。なお、カッコ内は前回の調査での割合である。

「宗教に関すること」56.7%(前回66.5%)
「支持政党に関すること」50.1%(前回61.9%)

「本籍地や出生地に関すること」や「購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること」などは低位にとどまった。

私も大学で教え子に、不適切、不愉快だと感じる質問であるという前提の同意を行ったうえで、質問してみた。すると「彼氏はいるの?」「女性だから、結婚したら辞めるんじゃないの?」という質問は、セクハラ質問として全員が不適切だと答えたが、家族構成の話になると不適切だと感じない学生が3割程度おり、出身地、尊敬する人物、購読紙に関しては不適切だと感じた人がゼロに近かった。

ブラック企業に行くことを防ぐ意味でも、内定取り消しや求人詐欺、さらには就活ハラスメントから身を守る意味でも、大学ではワークルール教育が強化されている。政府からも就活における「オワハラ(就活終われ、終わらせろハラスメント)」に関して注意喚起が行われ、相談窓口の強化などの方針が発表された。一方、採用活動において何が不適切なのかをより明確にし、求職者に伝えることも大切ではないだろうか。

Z世代は人権に関する問題意識が高い。不適切な質問を繰り返すような企業には人が集まらない。採用氷河期が続く中、人権意識が低い企業は人が集まらず、未来が閉ざされるのだ。

常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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