子連れ記者、「子連れ出勤」を実体験してみた 抱っこで接客、授乳しながらデスクワークも

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午後になると子どもはオフィス内をウロウロ動き回るが、カーペット敷きの床は清潔が保たれ、クリップやホチキスの針などが落ちていることがないよう細心の注意が払われているので安心だ。「ふと気が付くと、別のデスクでスタッフのひざに抱っこされていたりします。つねに誰かしらが構ってくれるので人見知りせずに育ってくれています」(小林さん)。

子連れ出勤にはノウハウも必要

ただし子連れ出勤を可能にするためには、さまざまな工夫が必要だ。たとえば青山店では、約50平方メートルという小さな店にしては多めのスタッフを確保するようにしている。現在は12~13人が週1~3日出勤でシフトを組んでいるが、必ず子連れスタッフと単身スタッフをペアにしている。

また、子育て中のスタッフの急な欠勤や早退に対応するため、業務の内容はつねにチームで共有している。自分ひとりで抱えている仕事がないよう進捗を報告し、外部とのメールのやり取りも必ずチームのメンバーをCCに入れている。本社でのミーティングに出席できないときには、スカイプで参加する。

右から2番目が光畑社長。NPO法人「子連れスタイル推進協会」の代表でもある

そして、子連れ出勤は原則として1歳2カ月で「卒業」することになっている。特にショップでは、それより大きくなると動き回ったり、商品に触ったり、少し目を離したすきに店外へ出て行ってしまったりする危険があるためだ。卒業後もモーハウスで働き続ける人もいれば、子どもを保育園に預けて別の会社で働き始める人もいる。次の出産で戻ってくる人も少なくない。

モーハウスでは、これまでのべ約250人が子連れ出勤を実践。スタッフがつねに入れ替わることについて、光畑社長は「企業としては効率のいいことではないかもしれない。だがそれよりも、ひとりきりで子育てをしているお母さんや、働きたくても働けないと思っているお母さんたちに外に出かける一歩を踏み出してほしい」と話す。

モーハウスは、光畑社長が電車内での授乳体験を機に始めた授乳服作りを、ママ友たちが手伝いながら始まった会社だ。子連れ出勤は、授乳服メーカーだからとあえて”導入”したのではなく、「赤ちゃんとママで1セット」が設立当初からごく普通の形だったという。

光畑社長自身も、若い頃は「出産=仕事人生は終わり」と思い込んでいたという。両立なんて不可能で、思い切り働くのは子どもを産むまでと割り切っていた。それが、自身の出産・育児を通じて授乳服に出合ったことで、その思い込みが覆された。「子どもを産んでも終わるわけではないし、あきらめることばかりでもない」との考えに至り、子連れ女性も自由に出かけようと呼びかけるようになる。「畑や井戸端、商店街などで、かつて子育てと社会は共存していた。子育て中のお母さんたちも社会とつながり続けられるような選択肢を提案していきたい」(光畑社長)。

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