ヤマト「ネコポス」廃止、日本郵便に移管の切実 クール宅急便や郵便ポストの活用でも協業へ
ほんの少し前まで熾烈な荷物争奪戦をしていたライバル2社が一転、がっちりと手を組むことになった。
6月19日、日本郵政グループとヤマトホールディングスは物流サービスで本格的に協業すると発表した。まずはメール便だ。ヤマト運輸の「クロネコDM便」(カタログなどをポストに投函して送れる)を 2024年1月に終了して「クロネコゆうメール」としてサービスを開始する。ヤマトが集荷して日本郵便に渡し、日本郵便の配送網で届ける。
小型荷物を配達先のポストに投函する「ネコポス」も終了する。2023年10月から順次終了し「クロネコゆうパケット」となる。こちらもヤマトが集荷し、日本郵便の配送網で届ける。2024年末にかけて移行する予定だ。
同日の会見で、日本郵政の増田寬也社長は「相互のネットワークやリソースを活用し、物流業界が抱える(2024年4月の残業規制導入で一段と人手不足に陥る)2024年問題、トラックドライバー不足、環境問題などの社会課題の解決を目指す」などと語った。
投函ビジネスは協業の第1段階であり、今後は多方面へ広げる方針だ。ヤマトのクール宅急便や全国の郵便ポストの活用、空港カウンターや郵便局の受け取りサービスでの協業、物流拠点を結ぶ幹線輸送の拡大など多岐にわたる。
急成長したネコポスの悩み
今回の協業を持ち掛けたのはヤマト側だ。シェア争いの中で、両社は苦しい事情を抱えていた。
日本郵便は郵便物の減少が続く中、配送網を維持するために多方面でコスト削減を進めてきた。少しでも荷物量を獲得したいという事情がある。
「2020年をピークにゆうパック、ゆうパケットの荷物量が減っていた。トップラインを引き上げるのが大きな経営課題。(ヤマトの)DM便、ネコポスは大変大きな量。経営に非常にプラスになる」(日本郵政の増田社長)
不振の一因にはヤマトの存在があった。象徴的な例がメルカリ向けの配送サービスだ。2020年10月、日本郵便はメルカリ向けに小型荷物を投函する「ゆうパケット」配送料の値上げに踏み切った。
一方、ヤマトは荷物量を獲得すべく、競合サービス「ネコポス」の値下げに動いたのだ。ヤマトの長尾裕社長は値下げでなくサービス提供者の見せ方の違いと説明するものの、これが日本郵便にとって誤算だった。ユーザーはヤマトに流出し、大打撃を受けることになる。
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