絶好調ヤマトがアマゾンとの取引に過敏反応な訳 アマゾン日本法人のトップ交代が予感させる転換
ヤマトがアマゾンに、ニンジンをぶら下げた――。
物流関係者の間で話題となっているのが、7月20日に宅配最大手のヤマト運輸が発表した宅急便取り扱いサイズの拡大だ。10月4日から180サイズ(3辺合計180cm以内、重量30㎏まで、税込み2400円から)、200サイズ(3辺合計200cm以内、重量30㎏まで、税込み2840円から)の価格帯を新設し、サービスのラインナップを増やす。これによって宅急便の規格を超える荷物を届けるサービス「ヤマト便」は、10月3日の荷受け分をもって廃止となる。
取り扱いサイズを拡大した理由について、ヤマトは「ECの利用拡大にともない、本やアパレル・生活雑貨など小型の荷物だけでなく、消費者が家具・家電など大型の商品をECで購入する機会が増えているから」と発表している。しかし実のところ、これがアマゾン向けの施策と言われる由縁は、ヤマトはアマゾンの「ヤマト外し」に焦っているからだとみられている。
『週刊東洋経済』8月23日発売号は、「物流頂上決戦」を特集。自社でドライバーを囲い込むアマゾンにヤマトが翻弄されている様子や、イオンやセブン&アイ・ホールディングスを巻きこんだその余波をリポートしている。
サイズの大型化に加え、値下げも
さかのぼること4年前。物流業界は「宅配クライシス」に揺れていた。ヤマトや日本郵便、佐川急便ら大手の宅配会社はドライバーの労働環境改善を名目に、荷受け量の抑制と配送料の値上げを顧客に要請。とりわけ規模の大きかったヤマトが取り扱うアマゾンの荷物は1個当たり平均で280円から420円へと5割値上げしたといわれている。これをきっかけにアマゾンは「脱ヤマト」に舵を切った。
その結果、一部調査によるとヤマトに対する委託比率は、2017年4月に7割程度あった水準から足元で2割程度にまで減少。代わりにアマゾンは、コストの安い地域限定の中小配送業者「デリバリープロバイダ」や個人事業主向け「アマゾンフレックス」といった自社物流の利用比率を増やした。これが、ヤマトがアマゾンにニンジンをぶら下げなければならない理由だ。
ある物流会社の幹部は「ヤマトの取り扱い荷物は増えているとはいえ、投函型の『ネコポス』による伸びに支えられている。ネコポスへの依存度を下げるためにも、大口顧客のアマゾンに大型商品の配送を任せてもらいたいのではないか」と話す。
ヤマトの焦りは、一度上げたはずの価格の「値下げ」という形でも表面化している。2019年秋にヤマトは最大荷主であるアマゾン向けの配送単価値下げに踏み切った。アマゾンが従来の契約から委託コストの安いデリバリープロバイダに切り替えることに焦ったヤマト側が、「それよりも安い価格でやらせてほしいとアマゾンに持ちかけた」(デリバリープロバイダの1社)とされる。
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