絶好調ヤマトがアマゾンとの取引に過敏反応な訳 アマゾン日本法人のトップ交代が予感させる転換

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物流業界に詳しい青山ロジスティクス総合研究所の刈屋大輔代表取締役は、「北陸など一部地域では切り替えの直前になって、ヤマトがアマゾン向けの業務を取り返す動きがあった」と指摘する。

アマゾントップ人事が物語ること

さらにヤマトは2021年4月から、Zホールディングス傘下のヤフーが展開する「Yahoo!ショッピング」や「PayPayモール」の出店者向け配送サービスをリニューアルし、全国一律の破格料金を打ち出すなど荷物の確保に懸命な様子がうかがえる。例えば関東発・関東着で60サイズ(3辺合計60cm以内、重量2kgまで)の場合、ヤマトが個人向けに1個当たり930円で提供しているところ、ヤフーの出店者向けは382円で6割も安い。これは楽天グループが自社の店舗向けに提供する物流代行サービスと比べても2割安いという“衝撃価格”である。

こうした中、宅配クライシスを機に決めた荷物1個当たり420円という当初の値上げ価格については、すでに形骸化しているという見方が強い(ヤマトは取材に対し、「個別の契約については非公表」と回答)。

コロナ禍の巣ごもり需要が追い風となり、ヤマト運輸の親会社ヤマトホールディングスの業績は好調だ。2021年3月期の荷物量は前期比約16%増の20.9億個となり、売上高、利益ともに過去最高を記録している。それでもヤマトが身構えるのは、アマゾン日本法人のトップ人事とも無縁ではないだろう。

今年7月末、アマゾンジャパンで長年物流部門を率いてきたジェフ・ハヤシダ氏が社長を退任した。2005年の入社以来、物流業界に名を轟かせてきたハヤシダ氏は、アマゾンの物流事業を自社一辺倒とするのではなく、ヤマトなど外部の宅配会社との調和を図る役割も果たしていた。

2019年末、ハヤシダ氏は東洋経済のインタビューに対し、「ヤマトとケンカするためにやっているんじゃない」と発言。本社がアマゾンフレックスを早くPRするよう求めていることを引き合いに、「僕がそれを止めていた。アメリカ人はすぐ風呂敷を広げる」とも明かしている。前出の物流会社幹部は「ハヤシダ氏は日本の商慣行をよく理解しており、うまくアメリカとの緩衝材になっていた」と話す。

2005年にアマゾンジャパンの物流部門のディレクターとして入社し、2011年に社長就任したハヤシダ氏。社長退任後は、委託先だったデリバリープロバイダの顧問に就任するという観測が浮上している(撮影:山内信也)

しかし、ハヤシダ氏の退任によって関係者の衆目が一致するのは、アマゾンの容赦なき合理化、つまり物流の自前化だ。これまでアマゾン特需を受けていたデリバリープロバイダとて安閑としていられない。アマゾンは日本市場で年間5億個以上の荷物を取り扱い、売上高は「ユニクロ」のファーストリテイリングをしのぐ2.2兆円まで急成長している。

日本の物流、そして小売業界はこれからアマゾン一色になるのか。今回のトップ人事は、その歴史的節目を暗示しているのかもしれない。

上の画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします
二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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