「自ら学び直し」が出世・昇給に必須の時代が来る 骨太の方針に盛り込まれた学び直し政策の中身

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リクルートワークス研究所が2022年10月に1万人の就業者・就業希望者を対象におこなった調査によると、非デジタル人材のうち、ITやデジタル技術に関わる知識・スキルを学ぶことに関心がある人は約4割だが、実際に学んだ経験がある人はその半分の2割となる。さらに現在学んでいる人は2~4%と、極めて少ない。

この傾向について大嶋氏は、「どう学んでいいかわからない人や、過去に学んだが続かなかったといった状況が起きているのでは」と分析する。

一人で学ばないこと

当然、骨太の方針で掲げたような、国のリスキリング・学び直し政策が起爆剤になる可能性もある。しかし、とくにデジタル分野について個人が学び直しを継続的に始められるようにするにはどうしたらよいか?

大嶋氏はいくつかのアドバイスを示してくれた。「ひとつめは一人で学ばないこと。日本人の多くは、命令ではない学びをする習慣が少ないので続きにくい。そこで一緒に学び合う環境をつくるといい」とアドバイスする。

さらに、「もしデジタル系の仕事など、今後役に立ちそうな仕事をする機会があれば手を挙げてみるのも手」と話す。会社の仕事になれば必死に学ぶことになる。それをテコに学び直しを図れば習得も飛躍的に進むと思われる。

40~50代であれば、管理職となり、部下が上げてくるプロジェクトの良しあしを判断する必要がある。しかしデジタル関連の話になると、わからない項目が多く、判断がつかないケースもでてくる。「それを正しく判断できることに狙いを定めてデジタルの学び直しを考える」(大嶋氏)ことも戦略のひとつだ。

最後に大嶋氏が勧めるのが「困りごとを起点で学ぶ発想を持つこと」だ。デジタルは今、世の中の困りごとを一番解決できる可能性が高い手段だ。「デジタルを学べば、自分の大事な人を助けることにもつながる。そういうマインドセットを持てば、デジタルの学びもリアルに考えられる」。

「キャリアは会社から与えられるものから一人ひとりが自らのキャリアを選択する時代に変えていく必要がある」。これは骨太の方針の中に記載されている文言だ。政府の動きを先取りする形で、いま一度、自ら学び直すことについて考えてもいいかもしれない。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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