「自ら学び直し」が出世・昇給に必須の時代が来る 骨太の方針に盛り込まれた学び直し政策の中身
まず、企業側には、仕事(職務)ごとに必要なスキルを明示することを求める。一方、働き手側は求められるスキルを見ながら自分の希望にあった仕事を選択する。もし、求められるスキルが足りなければ、自らが学び直すことによって条件をクリアできるようにする。
政府は、そうしたGX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)といった新しいスキルが求められ、高い給料が得られやすい成長分野に人材を移動させることを狙う。
リクルートワークス研究所の大嶋寧子主任研究員は、「本来、リスキリングは企業が進めるべきと考えているが、この指針を読むと企業が人の生涯を支えることが難しくなる中で、個人が主体的に学ぶ仕組みを支えていくことの重要性を訴えている」と指摘する。
もっといえば、今後、自ら進んでスキルアップに努めければ、転職に有利・不利という話だけでなく、出世や昇給にも大きく影響する可能性を示唆しているともいえる。
デジタル分野がターゲット
具体的な施策についても、個人への直接支援の拡充に重きが置かれている。
これまでは、国の在職者への学び直し支援策は、企業経由が中心になっていた。補助金の予算規模で見ると、人材開発支援助成金や公共職業訓練といった企業経由の支援が771億円、一方で教育訓練給付などの個人経由は237億円にとどまる。これを、5年以内をメドに過半が個人経由での給付にすることを目指している。
この教育訓練給付は、雇用保険の制度のひとつで、働く人自らのキャリア開発を支援する。資格・検定講座や大学の講義・講座などを修了すれば受講費用の20~70%が給付される。資格や修了証について厚生労働省が認定するプログラムは約1万4000に及んでいる。
骨太の方針では、この教育訓練給付の充実化を進めことが明記された。
さらに三位一体の労働市場改革の指針には、具体的な職種として、ITやデータアナリティクス、プロジェクトマネジメント、技術研究、営業/マーケティング、経営・企画、観光・物流など、学び直しでスキル向上が期待でき、高い賃金が獲得できる分野のプログラムを受講する際の補助率や補助上限の拡充を進めて行くと明記している。
その際、オンラインを活用した受給までの効率化や、コンサルティングによる妥当性の確認といった点も項目として盛り込む。
今後、仕事の現場でニーズが高まるスキルの習得に大きなインセンティブを置いていることがわかる。とくにデジタル分野に対する支援の比重が高く、たとえば給付率が高い対象講座(専門実践教育訓練)については、デジタル関連講座の数を今の約180から2025年末までに300まで拡充させることを目標に掲げる。
こうしたデジタルスキルは、若い人だけでなく、40~50代の中堅・ベテラン社員に至るまで多くの人が身につけたいと思っている。しかし、個人による学び直しは、「思っていても実現するハードルが高い」という現状がある。
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