エナジードリンクにも添加「タウリン」意外な効果 マウスやサルの実験では寿命が延びた

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マウスでは体重増加の抑制、筋力の増強、不安レベルの低下のほか、細胞レベルでの改善も多数見られた。こうした恩恵には、いわゆるゾンビ細胞の減少も含まれる。ゾンビ細胞とは、分裂を止めて近くの組織に悪影響を及ぼす古い細胞のこと。タウリンの投与により、マウスの平均寿命はメスで12%、オスで10%延び、虫の寿命にも同様の影響をもたらした。

さらに研究チームは、2つのデータセットを分析することで、タウリンが人間の老化を抑える証拠を見つけた。1つは、イギリス東部に住む約1万2000人の中年の人々を対象にしたもので、タウリン不足と肥満、糖尿病、高血圧といった疾患との関連が示された。

もう1つはドイツのスポーツ選手に関するデータセットで、高強度の運動で自然にタウリンを増やせることが発見された。運動がもたらすアンチエイジング効果の一部がこれで説明できるかもしれない。

タウリンが体内で作用する仕組みは、まだはっきりとはわかっていない。マウスと虫を使った実験では、細胞内でエネルギーを生成するミトコンドリアの健康維持にタウリンが役立っていることが示唆されている。しかし、国立老化研究所のクリスティ・カーターは、さらなる研究が必要だと指摘する。「タウリンの作用はまだ定かではない」と彼女は述べた。

人間にそのまま適用できるわけではないが…

それでも、健康マニアのバイオハッカーや長寿を求める人々は、そうした新しい科学的知見が得られるのを待つことなくタウリンサプリメントを摂取し始めるだろう。

「この論文はとても綿密で説得力がある」。そう語るのは、オーストラリアのバイロンベイに暮らす「ロンジェビティー・ブログ」の創設者、ニック・エンゲラーだ。「この論文が出たことで、寿命を延ばすために自宅で試すことの最有力候補にタウリン摂取が躍り出た」と彼は言う。

しかし、大半の臨床医と寿命科学者たちは、人間についてより厳密な臨床データが取れるまでは、エナジードリンクをがぶ飲みしたりタウリン粉末をプロテインシェイクに入れたりすべきではないと注意を促している。

「私はいつもこう言っている。臨床試験が行われるまで待つように、と」。そう話すのは、メイヨークリニックの老年学者ジェームズ・カークランドだ。彼はタウリン以外の化合物を使ったアンチエイジング研究を主導している。

(執筆:Elie Dolgin記者)
(C)2023 The New York Times

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