元Google人事が説く管理職がやりがちなNG行動 エンジニアの心理的安全性を下げる行動とは?
──「心理的安全性」がうまく高められていないケースが多いということですが、その原因はどこにあると思いますか? 心理的安全性を高めているつもりなのに、メンバーの仕事に対する意欲が上がらなかったり、離職が続いたりして悩む開発現場のマネジャーが見直すべきポイントは?
真っ先に疑うべきポイントは、大きく分けて4つあります。1つずつ説明しますね。
IT業界は最新のテクノロジートレンドやサービストレンドに売り上げを左右されやすい業界。そのため、トレンドに敏感な若手エンジニアの意見や感性を重視する組織もあるでしょう。
もちろんいいことではありますが、「若手がせっかく意見を言っているから」という理由で肯定ばかりするのは適切とは言えません。
若手と上層部では、見えている範囲が異なります。最新技術を用いたチャレンジングなアイデアであっても、プロダクトが開発されてきた過程や事業全体を見渡したときに、「採用すべきではない」という判断が必要なときもあるでしょう。
その際に必要なのが、心理的安全性の定義の1つに挙げた「建設的な意見の対立」です。
若手の心理的安全性を高めるのは、アイデアの採用・不採用という表面的な事柄ではなく、納得感。「いいね」と言われてアイデアを採用されたとしても、その場では心地いいように見えて、後々「あの選択は今の組織にとっては誤りだった」と気づく瞬間が訪れるでしょう。
そうなるくらいであれば、たとえ意見が不採用になったとしても、その背景にある事情・理由を説明すれば「次はもっといいアイデアを出そう」と組織に対するエンゲージメントを高めて奮起してくれるはずですよ。
目的を示せないと不要な忖度や衝突が生まれる
メンバーの自発性やアイデアを重視するあまり、マネジャーがプロジェクトの目標をはっきり伝えられていないケースもよく見受けられます。
ただ、プロジェクトのゴールや開発しているプロダクトが提供しようとしている価値が明らかになっていないと、組織の心理的安全性が徐々に下がってしまうので要注意。
なぜなら、みんなが向かっていく先の目的がない場合、ゴールが明確でないために不要な忖度が生まれたり、必要のないところでの衝突が起こったりしやすくなるからです。
そのため、マネジャーが意識すべきは、何のためのプロジェクトで、何のために開発してほしいのか、その目的をきちんと定義すること。そして、どのような行動をとれば高い評価につながるのか明確にすることです。
例えば、OKRなどの目標管理の手段を用いて、目指すべき先がどこにあるのか、達成すべき数値は何なのかを明確化できるといいですね。そのうえで、このプロジェクトの「成功」は何なのか、全員が同じ回答ができるようにしておきましょう。