池上彰さんが考える「教養」がある人とない人の差 「ただの物知りじゃない」教養を武器にする子育て

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これは決して一部の特殊な若者の話ではないように思います。

日本の選挙では若者の投票率がとても低いのですが、これも選挙の結果が暮らしに反映するという知識がないことが一因ではないでしょうか。若者が選挙に行かず、60代、70代の政治家が大きな力を持っているために、若い人たちにとって切実な問題である妊娠・出産・仕事と子育ての両立などの政策がなかなか論じられないのです。

あるいは、軽い気持ちでネットいじめやSNSでの中傷を繰り返す。それがデジタルタトゥーとして残ることには無頓着です。

最近の企業は採用しようと思う学生のSNSをチェックすることが多く、しっかり調べると過去の発言もちゃんと出てくる。企業は不採用の理由を教えたりはしませんが、ネットでの発言が影響を及ぼしているケースは少なくないと私は見ています。

知識を得ることは、教養を身につけるための第一歩です。勉強はいい学校へ行く、いい会社に入るためではなく、豊かな人生を送るために必要なのだということを、子どもたちにわかってもらいたいと思います。

(画像:『池上彰のこれからの小学生に必要な教養』)

教養の土台となる知識は手間をかけて手に入れる

最近は、知識のインプットに動画サイトを使う人も増えています。YouTubeやTikTokで調べ物をする子どもも珍しくありません。ただ、こうした動画が玉石混交であることはよく知られています。

特に個人が発信しているものは、偏った考えで作られていたり、思い違い・勘違いをそのまま流したりしているケースがあります。中には、意図的にフェイク情報を流す人も。

これからの社会を生きる子どもたちは否応なくデジタル情報と関わっていきますから、動画やネットをやみくもに遠ざけるわけにはいかないでしょう。ただし、正しい情報は発信するのも手に入れるのも手間がかかるのだということは、伝えてほしいと思います。

次ページ知識を得る際にはできるだけ手間をかけてほしい
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