ディスカウントスーパーとしておなじみの「オーケー」が銀座に出店するという。銀座で食品を買うならデパ地下が常識だった。そこに“Everyday Low Price”をうたう“安売りスーパー”が進出するとは、100円ショップ「ダイソー」が銀座店を開いた時以上の驚きだ。
100円ショップの銀座進出時には、若者層や訪日客を呼び込む効果があると想像したものだが、スーパーとなると話が違う。なぜ、食品スーパーが銀座に600坪を超える売り場面積の店を出すのか。3つの疑問が消せない。
① 何を買わせたい?
オーケーのこだわりは、Everyday Low Priceつまり「毎日が特売日」で、しかも地域一番の安値を目指している。「万一、他店より高い商品がありましたらお知らせください。値下げします」との宣言までしているほどだ。
消費者として評価したい姿勢だし、この食品値上げ時代にあって実に助かる。しかし、ちょっと気になるのは、この「安さ」そのものだ。
特に欲しくなかったものでも、「安い」と感じるとつい手に取ってしまう。安さにはそれだけ人を引き付ける魅力があるのだ。その商品が必要かどうかより、「安いなら買っておこう」との思考が働き、衝動買いを起こさせる。この心理をよくつかんでいるのが、まさに100円ショップであり、「100円ならいいか」とどんどん予定外の買い物を続けてしまうゆえんだ。
しかし、スーパーの食品となるとそうもいかない。「安い! 買っておこう」と思っても、相手は生ものだったり、冷蔵品だったりする。お客がその時クーラーバッグを持っているとは限らない。
オーケー銀座店が出店するマロニエゲート銀座2は、地下鉄銀座駅のほか、銀座一丁目駅やJR有楽町駅にも近い。銀座に来る人の多くは車ではなく、これら公共交通機関でやってくる。おまけに全員が近隣エリアから訪れてくるわけでもなく、これから1時間程度電車に乗って帰るとなると、買えるものは限られるだろう。安さゆえの衝動買い戦略は、ちょっと難しいのではないか。
類似の例として、渋谷での食品スーパーの例を挙げよう。厳密にはスーパーではないが、渋谷道玄坂にあるMEGAドン・キホーテの地下は、かつてワンフロアが食品コーナーだった。肉に野菜、スイーツにジュース、納豆・豆腐・練り物加工品……と実に充実していた。おまけに安値を日々リサーチしている筆者から見ても、立地が渋谷とは思えない驚異の安さだったのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら