理由としては、以前より、税制上の制約や高度金融人材の不足、語学の問題等が指摘されています。ただ、最新ランキングの上位3都市(ニューヨーク、ロンドン、シンガポール)に合計で約10年間駐在した筆者の実感から言えば、東京には、これらの都市が有している重要な要素が決定的に欠けていることが最大の要因だと考えています。「多様性」です。
東京も、街で外国人を見かけることが増えましたが、その多くは観光客です。多民族・多文化都市であるニューヨークやロンドンとは大きく異なります。シンガポールも、550万人の人口のうち、約3割が外国人です。世界中から優秀な金融パーソンを惹きつける必要がある国際金融都市にとって、この「多様性」は非常に重要な要素です。
自分が異国に住むことを考えれば、「多様な人々がいる都市」のほうが、溶け込みやすく、居心地はいいでしょう。筆者はこれまで世界74カ国を訪問しましたが、日本の「単一性」は世界でもかなり特殊です。観光であれば、その「異世界感」を求めて来日する外国人も多くいますが、駐在となると、この「単一性」は一転してハードルにもなりえます。
来日した外国人旅行客が「日本大好き」「日本に住みたい」と答えるのを聞いて、世界中の人々が皆「日本好き」と勘違いしがちですが、欧米人の中には、「アジアや日本が苦手」という人もたくさんいます。
LGBTへの無理解が足かせに
さらに、G7(先進7カ国)広島サミットを機に改めて明らかになったように、性的少数者に対する差別禁止や同性婚を法的に認めていないのは、G7諸国の中で日本だけです。
高度な教育を受け、教養レベルの高い世界の金融パーソンは、日本人が考える以上に、こうした点に敏感です。さまざまな観点での「多様性の欠如」が、国際金融都市としての東京の最大の欠点であり、その傾向をますます強めてしまっているのが日本の現状です。
東京は諸外国の大都市に比べて治安がよく清潔で、さらに近年は円安効果もあり、「駐在先としての東京」の魅力は、何とか維持されています。一方で日本のGDPは伸び悩み、「多様性の欠如」という致命的な欠点を改善することは困難です。
そのような中でも、東京が、国際金融都市としての復活を目指すのであれば、どうすればよいでしょうか。筆者は、総花的な取り組みではなく、「フィンテック一点集中戦略」しかないのではないかと考えます。
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