戦国の寝業師・水野信元誅殺に至る恐るべき裏側 戦にも外交にも優秀すぎたゆえ迎えた残念な最期

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信元も追い落とした佐久間信盛でしたが、その4年後、信盛は信長から追放処分を受けます。十九カ条に及ぶ折檻状のなかで興味深いものがありました。

信元を直接処断した家康に、さらなる家中の危機が迫る

「水野信元の死後、その領地を与えたのに家臣を増やさず、ただその領地を奪い取っただけである。これは言語道断」

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信盛の所業は、単に私利私欲のため信元の領地を掠め取っただけであると断じたのです。さらに信長は、信元は冤罪だったとして家康のもとにいた信元の弟の忠重を呼び寄せ、水野家の所領を回復しました。

その後、水野家は徳川家に属し譜代大名として扱われ、幕府の重職である老中をたびたび輩出します。なかでも天保の改革の水野忠邦が有名です。戦国の寝業師・水野信元の血脈は幕末まで続いていくことになります。

こうして水野家は長く続きましたが、そのきっかけをつくった信元を直接処断した家康には、さらなる家中の危機が迫っていました。

眞邊 明人 脚本家、演出家

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まなべ あきひと / Akihito Manabe

1968年生まれ。同志社大学文学部卒。大日本印刷、吉本興業を経て独立。独自のコミュニケーションスキルを開発・体系化し、政治家のスピーチ指導や、一部上場企業を中心に年間100本近くのビジネス研修、組織改革プロジェクトに携わる。研修でのビジネスケーススタディを歴史の事象に喩えた話が人気を博す。尊敬する作家は柴田錬三郎。2019年7月には日テレHRアカデミアの理事に就任。また、演出家としてテレビ番組のプロデュースの他、最近では演劇、ロック、ダンス、プロレスを融合した「魔界」の脚本、総合演出をつとめる。

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