ついに発表「トヨタ史上最大」のモノづくり変革 全固体電池を含む新BEV計画で変わる業界図

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比較として、これまでの鉄の合金をプレス加工し、溶接して作った車体後部が置かれていたが、こちらは86部品・33工程からなる。対するギガキャストでは、1部品・1工程で作ることができ、生産工程がまったく変わる。

アルミ鋳造については現在、エンジンやトランスミッションなどで使われる工法であり、その知見を車体に活かすという。

左が86の部品からなる従来品。右がギガキャストによる一体成型品(写真:トヨタ自動車)

筆者が気になったのは、「これを、従来のプレス工程のように組立工場内に置くことが可能なのか」という点だ。これまで、さまざまな自動車メーカーのエンジン工場などで鋳造製造の現場を数多く見てきたが、高熱での過酷な作業が今でも必要とされているのが実状だからだ。

これに対して開発担当者は、そうした鋳造作業の実状を十分に踏まえたうえで「作業工程における周囲の空気の冷却など新しい生産技術を採用し、従来プレス工程がある場所にギガキャスト製造工程を設置するべく話を進めている」と新工法の実現性の高さを強調した。

これが実現すると、製造におけるリードタイムは一気に短縮され、自動車業界全体に対する大きなインパクトを与えることになるだろう。

トヨタは、「bZ4X」を筆頭とした現行のBEVやHEV(ハイブリッド車)の生産方式と比べて、ギガキャストなど新しい技術を導入する生産手法により、「BEVの開発費を従来を100とすると2026年に70、そして将来は50と半減、また工場投資は2026年に半減させる」(BEVファクトリープレジデント 加藤武郎氏)とする。

BEVファクトリープレジデントの加藤武郎氏(写真:トヨタ自動車)

5つの電池の量産を「あと5年以内」に目指す

次に、電池技術。今回は、一気に5種類もの新型電池を公開し、これらすべてを「5年以内の量産」を目指すというから驚きだ。

トヨタが持つ電池の基準として、2022年から量産しているbZ4Xに搭載するリチウムイオン電池パックがある。この電池パックでの満充電の航続距離は、中国の基準であるCLTCモードで615km、そして急速充電についてはSOC(電池の充電状態)10~80%における充電能力を約30分としている。

今回、説明された各種電池に関する展示(写真:トヨタ自動車)

これに対して、2026年から量産予定の「パフォーマンス版」では、ニッケル・コバルト・マンガンによるいわゆる三元系とすることで、bZ4X用の電池と比較して、航続距離が一気に2倍、コストは20%減、そして急速充電能力で20分を実現する。

次ページ「パフォーマンス版・バイポーラ」に全固体電池も
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