ついに発表「トヨタ史上最大」のモノづくり変革 全固体電池を含む新BEV計画で変わる業界図

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なお、これら5種類の電池の生産については、アメリカのIRA(インフレ抑制法)のような国や地域での規制、またBEVの実質的な需要を考慮し、地産地消型と国や地域を超えた連携型の双方について、電池サプライヤー各社などとの協議を進める。

2026年150万台、2030年350万台が見えた?

今回のワークショップでは試乗も充実しており、乗用BEV、商用軽バンBEV、「ハイラックスBEV」、FCEV(燃料電池)小型トラック(量産済み)、FCEVトラック(助手席乗車)など数多くのトヨタおよびトヨタ関連企業(日野・ダイハツ)の電動車に試乗した。

今回、試乗車として用意された電動パワートレイン車(写真:トヨタ自動車)

その中で印象的だったのは「クラウン クロスオーバー」をベースとしたBEVだ。走り味としてクルマ全体の一体感があって、操縦安定性もかなり高いレベルにあると感じた。完成度も高く、“ほぼ量産レベル”といえるデキばえだった。

そのデキのよさの背景に「走りの作り込み」に対する匠の技があることを、匠自身の言葉とトヨタ関係者のコメントからも理解することができた。

トヨタはこれを「マルチパスウェイプラットフォーム」と呼ぶ。つまり、ICE(エンジン車)やHEVとBEVをトヨタ既存の車体構造であるTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)で“作り分ける”ことを指す。

「クラウン クロスオーバー」ベースのBEVは擬装が施されていた(写真:トヨタ自動車)

一方で、bZ4Xの「e-TNGA」はBEVのみに対応するプラットフォームで、ハイブリッド車への転用を想定せずに設計されている。さらに、前述のギガキャストによる次世代BEVがある。

つまり、2020年代のトヨタBEVは、これら3つの方式が同時並行で量産され、そこに全固体電池を含む合計6種類のリチウムイオン電池を採用するという、「BEVのマルチパスウェイ化」を進めることになる。

2023年4月7日の「新体制方針説明会」で「2026年までにグローバルで新たなBEVを10モデル投入し、BEV年間販売台数150万台と、2030年の同350万台」の実現を目指すとしていた。

それが今回、ギガキャスト等の新技術を使うBEVファクトリー由来の次世代BEVとして、コンパクトサイズのセダン・ハッチバックで36万台、ミッドサイズではSUVが36万台、そしてラージサイズではMPV(マルチパーパスヴィークル)が12万台、SUVが60万台、そしてセダン・ハッチバックが24万台の合計168万台をグローバルで目指すとし、という具体的な数字を開示。これを基に、2030年でのグローバルBEV販売の基準である350万台のうち、BEVファクトリー由来の次世代BEVの基準を170万台とした。

つまり、350万台と170万台の差分である180万台は、TNGAベースのマルチパスウェイプラットフォームとbZシリーズなどで使うe-TNGAによるBEVということになる。

このほか、水素活用については「商用車最優先」を掲げ、先に発表したダイムラー・トラック・三菱ふそう・日野との協業も含めた「水素を使う量を増やす」体制づくりを進める。燃料電池車の市場規模は2030年には年5兆円を予測し、このうちトヨタへのオファーとして年間10万台(小型乗用車:約5割、大型トラック:約3割)と見込む。

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