佐藤晴真氏が語る「チェリスト」の奥深い世界 新進気鋭の演奏者が引き寄せられた音楽の魅力
幼少期の佐藤氏がいかにして音楽への道を歩み出したかは、『有名音楽家にみる「子供が自発的に練習する瞬間」』で聞いた。前後編の後編では、一般には想像のつかない「チェリストの世界」を中心に話してもらった。
──クラシック音楽家になる方のキャリアとしては、主に「オーケストラ団員」と「ソロ活動」という2つの道がイメージされます。チェリストの場合、進路はどのように決まっていくのでしょうか。
その人が興味のある楽曲のタイプによって、方向性が決まっていくのではないかと思います。
「室内楽」と呼ばれる、二重奏や三重奏など小編成の曲が好きな人はソロでやっていくことを目指すように思います。室内楽曲はそう多くないので演奏のレパートリーは限られますが、少人数での濃密な音楽づくりをしやすい。例えば、ピアノとの二重奏ソナタでは、自分とピアニストの間に一対一の「対等の会話」が成り立つ。
一方、オーケストラ団員になる場合は、大勢で一体となって壮大な音楽を作り上げるという楽しみがある。楽しみ方の違いというか、音楽の趣味の違いです。
ちなみに、小さい頃から練習するとなると、中心になるのは基本的にソロ曲です。オーケストラの曲を個人で小さい頃から練習することは、実はほとんどありません。
舞台上での「音楽的対話」は醍醐味
──佐藤さんの場合、ソロ活動といってもいろんな形で演奏をしていますね。
はい。オーケストラとの共演で協奏曲のソリスト(独奏者)として演奏することもあれば、室内楽形態ではほかの弦楽器や管楽器、ピアノの演奏者と一緒に、さまざまな組み合わせで演奏することもあります。
そして最もスタンダードなリサイタルの場合はチェロとピアノ、2人で舞台に上がっています。ピアノとの二重奏ソナタでは1曲の演奏時間が30分ほどになるので、本番を迎えるまでに長い時間をかけて準備をします。ピアニストと打ち合わせをして、リハーサルをして、という時間を過ごす。
リハーサルと本番がまったく違うことはそうそうありません。ただ、相手のピアニストによっては、本番の舞台上で起こる化学反応のようなものが、リハーサルを大きく上回って楽しいことがあるんです。
──先ほど言っていた「会話」が弾むと。
本番特有の高揚感や、本番の時間を楽しみたい気持ちから、リハーサルの時にはなかったアイデアが出てきたり、その新しいアイデアを演奏に取り入れたら、相手から即座に反応が返ってきたり。
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