佐藤晴真氏が語る「チェリスト」の奥深い世界 新進気鋭の演奏者が引き寄せられた音楽の魅力

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「そっちがそうするなら、こっちはこう弾くよ」というふうに、演奏そのものが会話のように展開される。大勢の方が観ている緊張感のある舞台の上で、即興の音楽的な対話をするのは、本番だからこその楽しさです。

室内楽には、一定のリズムを刻むドラムのような楽器は入らないので、本当に微妙なリズムの揺れやテンポの違い、次のフレーズへの入り方など、細かなニュアンスの掛け合いがある。それを2人で楽しめたときに醍醐味を感じます。

「自分が責任を持てる規模」を求めた

──​​オーケストラ団員になりたいと思ったことはありますか。

これまでオーケストラで演奏させていただいた経験からすると、僕はオーケストラに入るとちょっと肩身が狭くなるというか……。説明が難しいのですが、ほかの人を気にしすぎて、自分の音楽の理想像がちょっとぼやけてしまう。

オーケストラで弾いている友人が何人かいます。指揮者との相性の良し悪しや、音楽面だけではないオーケストラ内の人間関係の難しさなど、関係する人数が多い分、大変さもあるような印象です。

つねにオーケストラの一員としてやっていくとして、例えば指揮者が自分と違うアイデアで指揮を振った時にどうなるか。僕自身のこだわりとぶつかって、心から楽しめないんじゃないか、とか。勝手な想像ですが、そんなことを考えたりもします。

僕は自分がとことん納得いく音楽ができる形態、自分が責任を持てる規模でやりたいんです。小規模なら、もしうまくいかなくても自分の責任として負うことができる。

──​​ソロでの活動とオーケストラへの入団、進路選択の分かれ道はどんなものなのでしょうか。

明確な入り口があるわけではないけれど、オーケストラを目指すのか、ソロでやっていくのかを決めなきゃいけないタイミングが、どこかでやってきます。オケに入るためにはオーディションを受けて合格しなければならず、それには入念な準備が必要です。

「オーケストラスタディー」と総称される、その楽器が目立つ一節やちょっと難しいところを多数集めた教則本がいろいろな出版社から出ています。オーディションでは、それらの本に載っているフレーズを弾く。

さまざまなフレーズを演奏する様子から、その人がどのぐらいそのオケに合ってるか審査されるんです。オーケストラの中で弾くのと、ソロで弾くのとでは音の出し方も違います。目指す道が何なのかによって、奏法のシフトチェンジが求められる。

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