佐藤晴真氏が語る「チェリスト」の奥深い世界 新進気鋭の演奏者が引き寄せられた音楽の魅力
ソロの場合、二重奏ではピアノと対等、コンチェルト(協奏曲)ではオーケストラ全体と対等に音を出す。とくにコンチェルトでは、オーケストラ全体を伴奏に演奏しても自分の音を客席に届けられるぐらい音が飛ばないといけない。馬力がいるんです。
一方、オケを目指すなら、周りと一体になって馴染む奏法だったり、変に浮かずチームの一員として調和するような音を作っていく必要がある。
──佐藤さんもどこかのタイミングで、自分はソロでやってくんだ、オケの道はないんだという決断をされたのでしょうか。
そうですね。小さい頃はジュニアオーケストラで演奏したことや、エキストラとしてオケの中で弾かせていただいたこともあったのですが、やはり自由度が違う。ソロに慣れすぎたせいかもしれません。
すべて自分の思うまま表現できることに慣れると、その自由度が減った時に少し窮屈さを感じてしまう。自分にはオーケストラはあまり向いてないな、と思ったタイミングがありました。
音楽を「寝かせる」ことも大事
──3枚目のアルバムとしてメンデルスゾーンの曲のみで構成した「歌の翼に」をリリースしました。先ほどの話では、細かなニュアンスの掛け合いが室内楽の醍醐味とのことでした。CDの収録にも共通しますか。
共通します。収録前の準備はたくさんしますが、やはり収録中にも新しいアイデアはどんどん出てくるものです。「歌の翼に」でも、つねに新しい音楽、つねに新鮮なアイデアで録音に臨めました。
準備段階でも面白いことがあって、今回の収録に際しては、音楽を「寝かせる」ことの大事さを非常に強く感じました。
「歌の翼に」に参加してくれたピアニストの久末航君とは、ベルリンで同じ大学に通っていて、2022年の夏ぐらいから収録曲の「ソナタ2番」をよく一緒に演奏していました。
ただ、そこからレコーディングまでの間に、3〜4カ月、この曲に触れない期間があったんです。数カ月空けてまた一緒に演奏してみると、お互い成長していて、寝かせる前とはまた違う音楽が生まれた。
曲への理解を深めたうえで、あえて寝かせるというのは、想像以上に大切なことです。ずっと同じ曲を練習し続けるよりも、作品全体を客観的に見られるようになったり、新鮮なアイデアが生まれやすくなったりします。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら