伝統仏教は現代人の不安に寄り添えているか 主要9法人に過疎地寺院やLGBTQについて聞いた

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無住寺や兼務寺の増加については、高野山真言宗は「人口減少が加速している現代社会において寺院運営は厳しい状況が続いている。過疎化地域では(無住寺や兼務寺が)顕著。一人の住職が数カ寺を兼務するなどして寺院を維持している状態」と回答。こうした受け止めは全体でも支配的だ。天台宗は「過疎化の流れは宗派の取り組みだけで改善することが困難。宗教活動が困難な法人寺院については合併、解散の手続きを促し、整理せざるをえない」とする。

浄土真宗本願寺派は過疎化が深刻な地域に「過疎対応支援員」を配置。運営が困難な寺院については聞き取りや助言をし、場合によっては解散や合併のサポートにつなげる。解散、合併する寺院の建物除去費用や事務費についても助成金を交付している。

曹洞宗は解散や合併について「何から始めてよいかわからない」という声が多く寄せられたことを受け、2022年6月、「寺院の合併・解散マニュアル」を作成、ホームページに掲載する。日蓮宗は2023年度から「寺院問題対策委員会」を設置し、寺院の再編に関する制度問題の検討を始める。真言宗豊山派や臨済宗妙心寺派も同様の委員会を立ち上げた。

LGBTQ対応策はどこも積極的

LGBTQの理解促進についてはほぼすべての法人が積極的な姿勢を見せた。臨済宗妙心寺派はLGBTQを「現代的人権課題のひとつ」と位置づけ、宗内で実施する研修会などで取り上げている。日蓮宗も「いかなる理由があろうと性的指向並びに性同一性不一致を差別の対象とすることはない」とし、当事者や専門家を招いての研修、ワークショップを実施する。

浄土宗は「万民平等を説いた法然上人の念仏を通した真実の生き方を世界に広げ、共生社会を具現する」として、LGBTQについて浄土宗人権センターや浄土宗総合研究所などで偏見をなくす啓発活動を推進する。

曹洞宗の総合研究センターは「生きにくさ」を抱えている人々向けに僧侶や寺院がどう関わっていくかについて研修を重ねてきたところ、「セクシャルマイノリティの方の自死率が高いことを知った」という。それを受けて当事者への聞き取りや研究者による講演会を実施し、2019年には講演録「セクシャルマイノリティの生きづらさ」を刊行、全寺院に配布した。

浄土真宗本願寺派や真言宗豊山派、高野山真言宗もLGBTQに関する講習会や研修会を開き、浄土真宗大谷派は「しんらん交流館ギャラリー」で性的少数者に関する展示「いろいろな性を生きる展」を開催している。

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