破綻のユニゾ、「スポンサー再選定」騒動の内幕 高値での身売りを模索、入札方式に懸念も

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2023年に入ると事態は切迫する。5月に控える社債100億円の償還原資が用意できないためだ。焦ったユニゾHDは倒産事件を扱う弁護士の元に駆け込み、KPMG FASをフィナンシャル・アドバイザー(FA)につけて出直す。3月に入りようやく投資ファンド3社との交渉が進み、4月26日、民事再生法の適用申請と同時にNSSKと基本合意を結んだ。

ユニゾ

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すんでのところで支援を取りつけたかに映るユニゾHDだが、実情は時間切れとなったに等しい。申請時点でユニゾHDが保有していた現預金は、運転資金3カ月分に相当する約10億円しか残っていなかった。申請をこれ以上引き延ばせば、再建計画がまとまる前に資金ショートする可能性があった。

一方で、スポンサー不在のまま申請すれば一層の信用不安を招くおそれもあった。ユニゾHDは追い込まれた状況で、NSSKと基本合意を結んだのだ。債権者から再選定の声が高まった一因には、「NSSKに足元を見られたのではないか」という疑念もあるようだ。

曲者の「ラストルック条項」

今後はスポンサーの再選定に向けて6月下旬に1次、8月上旬に2次入札が行われる。従前の入札と異なるのは、グループ一体ではなく子会社のバラ売りも検討されていることだ。

ユニゾHDの傘下には、国内オフィスビルを賃貸・管理するユニゾ不動産およびユニゾファシリティーズ、ホテルを運営するユニゾホテル、そしてアメリカのオフィスビルを賃貸する現地法人が存在する。流動性を失ったアメリカ不動産部門を隔離するなど、投資家の好みに合わせるほうが高値がつく、という算段だ。

仕切り直しの入札に不安がないわけではない。一度基本合意を結んだNSSKに対して「ラストルック条項」が付与されることだ。ほかの入札参加者が有利な条件を提示した際、NSSKはそれを上回る条件を再提示できる。

好条件を引き出すためのラストルック条項には、副作用もある。ある不動産ファンド幹部は、「我々がどれだけ良い提案をしても、それを上回る条件をNSSKが後出しで提示できるなら、入札参加者は本気にならないだろう」と話す。

法的整理に移行してもなお、ユニゾHD再建の青写真はなかなか見えてこない。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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