石油製品の安定供給には新たな仕組みが必要だ--石油連盟会長 天坊昭彦

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 営業を再開したスタンドの数も増えている。石油連盟の集計では、元売り7社の東北6県の系列スタンドのうち、3月30日時点で8割に相当する2278カ所が給油を行っている。供給の状況が改善に向かっているのは間違いない。スタンドに行列ができている地
域も限定的になりつつあり、供給不足は近日中に解消できるだろう。

──現地で社員たちはどんな業務に当たっているのですか。

当社でいうと、東北被災地へ80名前後の社員を臨時に派遣し、スタンドの給油応援や営業再開に必要な設備の安全点検、お客さんからの問い合わせ対応などに当たらせている。これは当社に限った話ではなく、他の元売りも可能なかぎりの人員を現地への応援部隊に割いている。タンクローリーや内航タンカーといった配送・輸送業者、地元のスタンドも含め、石油供給にかかわるあらゆる企業、従業員が全力で頑張っている。これは断言できる。

──今回の震災を経て、これからの石油供給のあり方について、天坊会長の問題認識とは。

食料などと並んで、被災地で真っ先に必要とされたのが石油燃料だった。そうした現実を再認識したうえで、日本はこれからのエネルギー政策のあり方を考えていく必要があると思う。今回の震災でもわかったように、石油製品はまさに国民のライフラインであり、国の安全保障に類するエネルギーの根幹。にもかかわらず、電力・ガスと違って、石油業界は自由競争で、供給も完全に民間任せ。それで本当にいいんですか、と私は声を大にして問いたい。

石油の安定供給のための政策というと、政府は原油の輸入ばかりを考える。日本に原油を持ち込みさえすれば、後はどうにでもなると。しかし、現実はそうじゃない。原油を製油所で精製して、できたガソリンなどの石油製品を内航タンカーや貨車で油槽所まで運び、そこからタンクローリーで各地のスタンドに届ける。そうした国内のサプライチェーンがつねに健全に維持・機能していないと、石油製品は消費者に届かない。

需要が増えている間は、まだ何とか民間の力でサプライチェーンが維持できた。しかし、近年は国内の需要が毎年減り続け、われわれ石油業界の経営環境は非常に厳しい。このまま放置していたら、地域によっては供給に大きな支障が出るおそれがある。現にスタンドは毎年1500カ所以上のペースで減っている。すでに一部の町や村では地域の給油所がなくなり、深刻な問題になっている。安定供給をわれわれ石油業界に課すのなら、そのために必要なコストが賄えるような仕組みを国も真剣に考えてもらいたい。

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