石油製品の安定供給には新たな仕組みが必要だ--石油連盟会長 天坊昭彦
──電力やガスと同じように?
安全保障にかかわる話なのだから、そうあってしかるべきだと私は思う。仮に電力業界が石油業界のような自由競争だったとしたら、山の中の村に電気は届かない。法律によって全体の料金の中でコスト回収できる仕組みになっているからこそ、どの家庭にも電気が届く。石油は自由競争しろ、全国の津々浦々まで届けろ、と言われても、個々の企業の自助努力には限界がある。
どの製油所を残すべきか 業界と国で徹底議論を
──今回の震災後、有事に備えて国内製油所の能力削減を当面は見送るべき、という意見も出ています。
震災前の数字で言うと、国内の原油精製能力は日量450万バレル。一方、需要は330万バレルで、設備能力は内需より100万バレル以上も大きい。国内の需要は今後も減っていくのが確実で、これだけの過剰な設備を持ち続けるのは無理がある。極端な過剰設備は減らしていくべきだと思う。
むしろ、私が危惧しているのは、製油所の数を減らしていく過程で起きる配置の問題だ。製油所を減らす際、個々の企業の立場で考えれば、やはり関東にあるような大きな製油所を残したい。効率性を考えれば、当然、そういう発想になる。しかし、各社がみな同じ論理で製油所の再編成をしたら、国内各地への安定供給に大きな支障を及ぼしかねない。
──個々の企業にとっての最適と全体最適は違うと。
そのとおりだ。日本全体の安定供給の観点に立てば、製油所の再編成は全体最適を考えて行われるべき。ただし、単に各地に残せばいいという話でもない。国際競争が現に起こっている以上、競争力のある製油所を残さないといけない。
また多くの場合、製油所は石油化学と一緒にコンビナートを形成しており、そうした製油所がなくなると石油化学の産業に重大な影響を及ぼしてしまう。石油化学の国際競争力も保てる形で考える必要がある。