「遠方に住む高齢1人親」呼び寄せたほうがいい? 慣れない土地に住んでもらうため子がすべき事

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いざというときに駆けつけられないのが一番の不安なのか、日々の状況を見守れない不安なのか、あるいは自分が見守れなかったことで後悔したくないのか――。具体的に言語化してみることで、“親を呼び寄せる以外の解決策”が見つかるかもしれません。

例えば、いざというときに駆けつけられないという問題なら、自分が駆けつける以外の選択肢もたくさんあります。

特に最近は、さまざまな1人暮らしの高齢者の見守りサービスが、民間企業や自治体で提供されるようになりました。

家電などに組み込んだセンサーで離れた家族に異変を知らせるサービスや、弁当を届ける際に安否確認をしてくれる配食と安否確認を兼ねたサービス、ボタン1つで健康相談ができたり、警備員が来てくれたりするサービスなどがあるので、これらをうまく活用することで、少しは安心して過ごすことができると思います。

また、今はSNSツールのLINEのビデオ通話などで、手軽に離れた場所の様子をうかがうこともできる時代です。親がスマホ操作に不慣れでも、例えばLINEの返信まではできなくても、既読マークによってメッセージを見たかどうかを知ることならできます。

隣の人が面倒をみていた例も

私が見てきた1人暮らしの患者さんの中に、何かあったときのキーパーソンが家族ではなく、「隣人」という方がいました。81歳の女性の患者さんで、隣人は70代の女性。家族ぐるみの付き合いが続いていて、長年の友人という関係性でもあったようです。

患者さんの妹は他県に住んでいて、すぐに会えるわけではありません。そうしたこともあって、隣人の女性は患者さんの食事の世話まで積極的にされていて、「お隣の方がここまで関わってくれることもあるのだな」と私自身も新鮮な驚きでした。

隣人の女性が、「うちの子が小さいときにすごくお世話になったのだから、この人が困ったときに世話をするのは私の役割なの」というふうに話されていたのも印象的でした。

近所付き合いが希薄になってきている今の時代、こうした付き合いはなかなか見られなくなっていますが、いざというときに駆けつけたり、日頃の様子を見守ったりするのが、必ずしも家族でないといけないというわけではありません。

もし、どうしても自分が駆けつけたい場合には、それがなぜなのかも考えてみましょう。周りに迷惑をかけたくないからなのか、自分が後悔しそうだからなのかなど、そこには何かしら理由があるはずです。

もし「自分が後悔しそうだから」というのが理由なら、親を呼び寄せるだけが選択肢ではなく、自分が親のそばに行くのも1つです。譲れないポイントは何なのか、優先順位をつけながら、不安感を分解してみてください。

そのうえで、やはり親の呼び寄せたいと考えるなら、親が少しでも元気なうちのほうが、新たな場所での生活を築きやすいと思います。介護サービスがまだそこまで必要でない状態なら、新たな場所でのコミュニティ活動に加わったり、地域の人との交流を通じてこれまでと違う居場所を作ったりすることもできます。

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