著名教授「セクハラ裁判」で露呈した日本の異様さ 権威持つ年上男性には逆らいにくい文化
佐野さんは、林氏に対するセクハラ訴訟が長丁場となることを承知していた。しかし、「グルーミングやガスライティングなど、日本人があまり理解していない心理的虐待」を経験したことを示すために訴訟に踏み切ったと、彼女はいくつかのインタビューで語っている。
この事件は、日本のニュースメディアではあまり注目されなかったが、日本の美術界や学術界を揺るがすものとなった。アメリカとは異なり、教授と学生の関係を禁止している大学はほとんどない。同時に、年齢や地位による厳格な上下関係が文化的に根付いているため、目下の者(特に女性)が目上の者にノーと言うのは難しい、と専門家は指摘する。
「日本では、みんなで仲良くしようという文化があります」と、性暴力の被害者のための非営利擁護団体「Spring」の理事である佐藤由紀子氏は言う。「ですから、セックスを求められたら、断るのは難しいと感じるかもしれません」。
強制と同意の間の「グレーゾーン」
佐野さんは法廷で、繰り返しそのように主張した。しかし、日本の性暴力に関する法律は同意については触れておらず、誰もが暴力なしにセックスを強要され得るということに対する懐疑的な見方が反映されている。
佐野さんは裁判資料の中で、林氏との最初の性交渉の後、「アザだらけではなかったので、自分を性的虐待の被害者とは思っていませんでした」と述べている。
3月の判決では、強制と同意の間のグレーゾーンを認め、林氏が解雇されたことを「妥当」と判断した。しかし、佐野さんは涙ながらに、判決は 「自分より立場が上の人が精神的にどのようなことを実際にし得るかを考慮に入れて」いないと述べた。
佐野さんは敗訴したものの、裁判所は、妻の訴訟で佐野さんに課された罰則金の分担責任として、教授に128万円(約9800ドル)を支払うよう命じた。