著名教授「セクハラ裁判」で露呈した日本の異様さ 権威持つ年上男性には逆らいにくい文化
林氏は、この記事に対するコメントは拒否したが、証言の中で、自分が既婚者であり、佐野さんの指導教官であったことから、その関係が「不適切」であったと認めている。しかし、佐野さんはその関係に同意しており、さらにそれを助長することさえしていたという。
彼がその証拠とするものの1つに、佐野さんが大学院に入学する前の夏、他の学生たちと一緒に中部地方の博物館巡りをした際に送ったお礼のカードがある。そのカードには、「Dearest Professor H(最愛のH教授)」と英語で書かれ、そこには日本ではあまり使われない「xox(ハグ&キス)」というメッセージが添えられていた。
「学生から教授へのメッセージで『最愛の』と書かれるには、そこには普通では考えられない親密さが存在します」と林氏は証言している。
佐野さんによれば、単に「感謝とお礼」を伝えるために書いたものだという。
付き合っていたと信じていた
裁判記録によると、林氏は佐野さんと一緒に過ごすうちに「距離が縮まった」と語っている。佐野さんは、幼少期をイギリスで過ごしたため、日本では部外者のように感じていると林氏に打ち明けたが、林氏は、自分は海外での経験があるから理解してあげられると約束した。その秋、林氏を指導教官として大学院に入学した佐野さんは、林氏と東京の公園を散歩した。彼は彼女にキスをした。「断って嫌な顔をされるなんて、あり得ないことでした」と彼女は言う。
裁判の資料や証言の中で、林氏(当時48歳)は、佐野さん(当時23歳)と付き合っていると信じていたと述べている。
佐野さんはその秋、彼が美術シンポジウムで講師を務める京都への出張に同行した。彼女は、彼にホテルの部屋で一緒に過ごそうと言われたとき、何度も断り、自分の部屋に戻りたいと言ったと証言している。彼は、自分の部屋に来ることは相互合意の上だったという。
両者とも、林氏が佐野さんにオーラルセックスをしたことを証言したが、彼女は、それは嫌だったと表現している。彼女は、彼に何度も待ってと頼んで抵抗を示したと、法廷で述べた。「でも、彼は『大丈夫、大丈夫』と言い続けたんです」と佐野さんは言う。
その後10年にわたって、2人は東京のいわゆるラブホテルで定期的に会い、学術的な議論と性交渉を織り交ぜた交際をしていた。林氏はそのうちの1軒で、佐野さんの論文に目を通した、と裁判資料に書かれている。