データで検証!「弁護士は食えない」のウソ

「就職難」と「貧困化」は裏付けられるのか

日弁連では、請求によって弁護士登録を取り消す人の年齢層や司法修習期など属性情報は公開していない。ただ、請求により登録を取消した人の登録番号と名前は、毎月日弁連の機関誌「自由と正義」に掲載される。

そこで、この「自由と正義」掲載の名簿をもとに、2010年4月から2014年3月までに登録取り消しの処理が実施された人のうち、取り消し理由が「請求」となっている人を抽出、かつその中で再登録をしている人、裁判官になった人、弁護士研修を終えて裁判官、検察官に復職した人、そして「その他」の人、それぞれについて新司法試験世代なのか、それ以前の世代なのかに分け集計してみた。

ちなみに、再登録者については現在の所属事務所のホームページなどで経歴が確認できるなど、同姓同名の別人ではないと考えられる人だけをカウントしている。

それが「請求取消し者の新・旧内訳」である。新司法試験世代か、旧司法試験世代かの分類は、単純に登録番号3万5000番未満が旧司法試験世代、3万5000番以降を新司法試験世代として集計した。

このうち「その他」が、登録取り消しの理由が不明の人たちで、直近の2013年度(2013年4月~2014年3月)は新世代と旧世代がほぼ半々だが、旧世代の方が若干多い。その前年の2012年度は新世代よりも旧世代の方が圧倒的に多い。2013年度に留学で登録を取り消した人は、一般的な留学年数からするとまだ帰国をしていないはずなので、現段階での新・旧バランスを的確に表しているのは2012年度のデータと考えられる。

「6月」の取り消しが増えている意味は?

さらに、年間でどの月がいちばん請求による取消し人数が多いのかを集計してみた。月別統計が出ている「自由と正義」では、裁判官任官者も一律「請求」で表示されており、どの人がそれか判別できないので、この集計は裁判官任官者込みで集計している。

結果は、2011年度に大きく人数が伸びたのは12月だが、2012年度に大きく伸びたのは6月、というものだった。

2012年度は新世代1期生にあたる60期が5年目、つまり留学適齢期を迎えた年に該当する。米国のロースクールに留学をする場合、入学が9月なので、語学にある程度自信がある人は7月末に登録を取り消すが、入学前に語学学校に通う人は6月に登録を取り消す。若い世代の母数が増えた分、留学する人も増えたと考えれば、6月の伸びは説明が付く。実際、再登録者数がいちばん多いのも6月の抹消者である。

3月は以前から圧倒的に取消し人数が多いが、裁判官、検察官への復職に伴う取消しが、2012年度までは毎年13~14人おり、2013年度は18人に増えている。この判・検復職者を除けば6月の方が取消し人数は多い。

結局「その他」の人の取り消し理由が、「仕事がなく弁護士会費が払えず廃業」なのかどうかは一人ひとりに聞くしかないが、少なくとも「その他」の5~6割は旧世代であり、若い世代が大半ではないということだけは言える。加えて、留学による取消しが近年の若い世代の取消し増の原因の一つと考えても、矛盾はないように思う。

さらに言えば、「その他」の人たちが弁護士人口に占める割合は、2013年度で言えばわずか0.8%でしかない。新・旧世代別で母数となっている人数が違うだろうと思われるかもしれないが、世代別にこの割合を出してみても、旧世代が0.7%で新世代が1%だ。従って、請求による登録取消しの統計を「若手貧困化の象徴」とすることには無理があるように思う。

※ 後編は6月2日(火)の掲載予定です

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