「最初は守ろうと思ったんだよ。それなのにあいつがおかしなマネをするもんだから……」とギョンホ。
「ありえないだろ!」とシヒョンが声を張り上げる。
「あらあら、メーカー同士、ケンカしちゃったわね! でも、もともとこんなふうになってしまうものなんです。みんなは今、カルテル(cartel)の崩壊を目撃しているんですよ!」
ナ先生が3人の言い争いを止めながら話した。
「カルテル?」
シヒョンが聞き返した。
「そうです、このように1つの市場に企業がいくつもない場合を『寡占』といい、寡占の企業同士で価格や生産量などを決めることを『談合』といいます。談合とはいわば、3社が交わす約束のことです。そのように価格、生産量などについての協定を結んでできた独占形態の企業連合をカルテルと呼ぶんです。通常は、最大の利潤を得るために価格を決めるので、供給者が多い市場に比べて価格が高く設定されます。企業が少ないので当然、供給量も少なくなります。だけど、談合が守られるのはなかなか難しそうですよね?」
「談合を維持するほうが、互いにとっていいような気がするけど」
そう反応したシヒョンに、ギュヒョンが大きな声で言った。
企業が談合の約束を守るのは簡単じゃない
「ちょっと、自分たちで手を組んで価格を吊り上げることの何がいいの? 消費者をバカにしてるわよ!」
「違う違う、企業の立場ではってことだよ! そうなってほしいなんて言ってないさ」とシヒョンがとっさに言い返した。
「でも、企業が談合の約束を守るのは、口で言うほど簡単じゃないんです。シヒョンは2万円で売ろうという約束を守ったけれど、ギョンホとチャンミンは守らなかったのを見れば、わかりますよね。しかも、制服はそれぞれ1着ずつ作ることにしていたのに、ギョンホは2着も多く作ったわけだし! 約束を守ったシヒョンだけが、5000円かけて作った制服を売れなくて損したわけよね」とナ先生が言った。
「僕は、自分が約束を守らなくても、ほかの企業は約束を守ると思ったんです。いずれにせよ僕の選択が優れていましたね。ちょっと安く売ったら、消費者が殺到して大きな利益を上げたんですから!」
「僕は、ギョンホが約束を破ったのを知って、このままだと自分だけ損すると思いました。それで、約束を反故にして安く売ったんです」
ギョンホの主張に、チャンミンも負けじと発言した。
「結局、ほかの企業が約束を守ると考えるにしろ、そうじゃないにしろ、約束は守らないほうが有利なんじゃない?」
「だとしたら、談合は破られるものってことだよね!」とソナとジェヨンが言った。
「ええっ、約束を守ればお互いにとってもいいわけでしょ? そこを考えないと!」
ギュヒョンが言った。
「だけど先生、談合は破られてしまうものだっていうし、僕たちの実験でも本当にそうなったけれど……実際に僕たちが制服を買ったとき、制服メーカーがつけた値段はほとんど同じでした。冬用の制服は4万円近い価格だったんです! うちのお母さんが高すぎるって、ほかの店も2カ所回ったけど、値段はほぼ一緒だったと思います」
「そうそう。俺んちのお母さんもすごい高いってぼやいてた」
「うちもそうだった」
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