元日本代表・秋田豊、私財投じてクラブ社長の覚悟 スポンサー収入、観客動員数の引き上げに奔走

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監督時代からスポンサーになってくれる会社も出てきて、年間3000万円くらいは確保していました。ただ、今はクラブのトップですし、年間5億円近いスポンサー収入を確実に集めなければいけない。責任は重いけど、充実はしていますね」と秋田社長は持ち前のアグレッシブを武器に新たな地域で馴染み、根を張っている様子だ。

スタジアム改修のために自治体を日参

ただ、解決しなければいけない問題はまだある。その1つがスタジアム改修問題だ。現在は芝生席を含めて5000席以下しかなく、1万席を満たさなければJ2ライセンスを剥奪される可能性もある。2024年6月までに拡張計画のメドをつけなければならないだけに、秋田社長は岩手県など自治体に日参し、お願いに奔走しているのだ。

そのためにも観客動員数を引き上げないといけない。もともと岩手県は野球やラグビー人気が高い土地でサッカーはその次。今季のホームゲーム平均観客数も1369人と停滞している。チームの成績が11節終了時点で11位という現状も多少なりとも影響しているのだろうが、「1年でJ2再昇格」を掲げている以上、ここから快進撃を見せ、集客も右肩上がりにしていければベストだろう。

秋田社長のネットワークを生かして日本代表レジェンドを集めたイベントの開催なども企画していく方向で、地域を巻き込んでクラブを成長させられるように可能な限りの努力をしていく考えだ。

「三陸地域の子供たちを招待したり、地域に根差した活動も増やして、みんなに受け入れられるクラブにしていくのが僕の理想像。中長期的には資金規模も10億円に乗せないと恒常的にJ2以上のカテゴリーでは戦えないと考えています。ハードルは高いし、やるべきことも山積していますけど、まずはクラブ運営資金を稼ぐことが第一。頑張っていきますよ」

爽やかな笑顔を見せる秋田社長の手腕発揮はここからが本番。元日本代表レジェンドのみちのくでの挑戦の行方を興味深く見守りたいものである。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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