元日本代表・秋田豊、私財投じてクラブ社長の覚悟 スポンサー収入、観客動員数の引き上げに奔走

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そんな秋田社長を見込んだNOVA側から「株を取得してオーナーも兼ねてほしい」というオファーが舞い込んだのが昨年9月。まだシーズン終了前だった。彼は監督業の傍らで準備を始め、年内には33.4%の株を取得。経営権を掌握する形になった。雇われ社長は他のJクラブにもいるが、私財を投じて経営責任を負う元Jリーガー社長は彼1人と言っても過言ではない。それだけ大胆なチャレンジに打って出たのである。

「自分の身を削りながら社長をやるのは本当に勇気のいること。サッカー選手も監督もリスクを冒してピッチに立っている。自分は今までそういう世界で生きてきたので、思い切って飛び込めたと思います」と本人は言う。

監督時代から経営面の提言もしていたという秋田豊氏(C)IWATE GRULLA MORIOKA

とはいえ、いわては2022年に1年でJ3に降格を強いられたため、2023年は再び上を目指すことになった。2022年度のクラブ運営規模はJ3平均より少し上の6億7200万円(この年はJ2在籍)だが、その水準を維持しつつ、チームを強化していくのはそう簡単ではない。秋田社長は選手・監督など現場のチーム人件費の約2億円はそのまま残し、他で経費節減できるところはないかを1つひとつ精査し、経費節減策を講じていった。

「最初にやったのは、キャンプのコストダウン。寒冷地がホームタウンの我々は1~3月頭までのプレシーズンは地元で練習できないんで、県外に行かないといけない。その費用だけで5000万くらいはかかっていたんです。今年は茨城県神栖市、静岡県御殿場市、福島県のJヴィレッジで3回キャンプを張ったんですが、それぞれの移動費・宿泊費を見直し、かなり支出を抑えることができました。

フロントの社員も昨季までは18人体制だったのを今年から10人に減らし、仕事の質の向上を図りました。1人のスタッフが広報・運営・チケット販売と3役担うこともあり、本当に大変ですけど、親会社がない以上、小規模所帯で何とか回していくしかない。そう考えてスタッフを鼓舞しています」と要求基準を引き上げているという。

ドリンク販売でアクシデント

とはいっても、何もかもが順調に進むわけではない。3月25日のホーム開幕・アスルクラロ沼津戦ではアクシデントの連続だったと秋田社長は苦笑する。

「ホームゲームでの収益アップを狙って、今年からコーヒーを除くドリンク販売をクラブ側で手掛けることにしたんです。この施策には異論も出ましたけど、何とか納得していただいて、踏み切りました。

対戦相手の沼津はかつての代表の同僚・中山雅史さんが今年から監督になり、注目度は高かった。観客も1800人以上入りました。でも気温10度と寒かったのに温かいドリンクが少なかったせいで売上が想定より低い20万円にとどまったんです。その反省を生かして、次からはIHヒーターを導入したり、足りなくなったカップを買いに行かせたりと、僕自身が陣頭指揮を執ってやっています」

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