経済の状況を把握するのに要チェックな日本企業 変化の兆しがいち早く現れる日本企業とは?

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海外で東京エレクトロンに近い会社になると、オランダのASML社があります。フェルトホーフェンというところに本部を置く半導体製造装置メーカーで、半導体露光装置をつくっている世界最大の会社です。世界16カ国に60以上の拠点を持っていて、日本にも子会社があります。半導体露光装置では、この会社がほぼ市場を独占している状態です。半導体の世界動向を把握するためには、東京エレクトロンとASML社の業績、株価などを見ていると、おおまかな様子が見えてきます。

では、東京エレクトロンやASML社は、どこに製品を納めているのかというと、これが台湾のTSMCです。前述したように、TSMCは世界中の半導体企業から注文を受けて、実際に半導体をつくっている会社です。つまり東京エレクトロンやASML社にとって、TSMCは半導体製造装置を買ってくれる大事なお得意様ということです。

景気の動きをいち早く反映するのはBtoB企業

景気の転換点を企業活動の側面から見極めるためには、3つの視点があります。ひとつは前述したように、製品の製造工程の流れから景気を把握する方法です。製造工程の源流は原料です。石油、鉄鉱石、貴金属、レアメタルなどの原料を加工して、鉄鋼、セメント、その他の素材がつくられ、それを加工することによってさまざまな部品ができ上がります。

半導体で言えば、ケイ石という原料があって、そこから金属シリコンを取り出して多結晶シリコンをつくり、さらにそこから単結晶シリコンを抽出して単結晶インゴットにします。この単結晶インゴットをスライスしてでき上がるのが、半導体の素材となる「シリコンウェーハ」です。

そして、シリコンウェーハの表面に電子回路が形成され、さらに電子回路が形成されたシリコンウェーハを細かく切断して、半導体チップという部品ができ上がります。東京エレクトロンやASML社は、このシリコンウェーハに電子回路を形成するための半導体製造装置をつくり、半導体メーカーに提供しており、TSMCは半導体製造装置を使って、半導体チップを製造します。

その後はでき上がった半導体チップをスマートフォンやタブレット、パソコン、自動車など、さまざまな完成品に組み込み、最終製品ができ上がります。そして、この最終製品が小売店に並べられて、消費者の手元に届くのです。

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