ホンダが「5回目」のF1参戦を決断した深い理由 今度こそ持続的なレース活動は可能になるか

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三部社長がこう言うように、MGU-Kの出力は現在のレギュレーションでは1周あたり120kW(約163PS)と規定されているが、2026年以降は350kW(約470PS)と、3倍近くになる。現在と基本的に変わらないV型6気筒1.6・ターボエンジンは最高出力約400kW(約536PS)前後を発生すると言われているから、つまり内燃エンジンと電気モーターがほぼ半々の割合となる。

「こうした電動パワーの拡大においては小型、軽量、高出力のモーターや大電力を扱える高性能バッテリーとそのマネジメント技術が勝利へのカギとなりますが、ここから得られる技術やノウハウは電動フラッグシップスポーツをはじめ、これからの量産電動車の競争力に直結する可能性を秘めています。さらには現在、研究開発を進めているeVtolなどさまざまな分野の電動技術にも活かすことができると考えています」

カーボンニュートラル技術の開発に人材、資源を集約するというのがF1撤退の少なくともひとつの大きな理由だった。しかし、F1自体がカーボンニュートラルを目指していく中で、逆にここにいて技術を磨くことが、そこへの最短ルートになりうることが見えてきた。

ただ、実はF1へのPU供給がカーボンニュートラル技術の開発に貢献するものだということは、“前回”参戦時にはすでにわかっていたことだ。

水面下で再参戦の準備は進んでいた

2021年10月にオンラインで行われた「シーズンクライマックス取材会」にて、当時のホンダのF1PU開発責任者、浅木泰昭氏は、この時点で燃料としてホンダが成分を用意して、燃料会社がブレンドするかたちでカーボンニュートラル燃料を使っていたと話していた。また、低抵抗・高効率な内製の新型バッテリーも投入し、これは特許の出願もしていた。つまり今に始まった話ではないのだが、それでも、少なくとも一旦F1をやめると言わなければならない事情が主に社内にあったのだろう。

実際、再参戦に向けては、ほかにも後押しする要素はいくつもある。またホンダとしても慎重に準備を重ねてきた感が透けて見える。

予算的な面で言えば、PUメーカーにコストキャップ(予算制限)が導入されたことは大きい。2026年以降のそれは1億3000万ドル(約180億円)となるが、この数字は前回参戦時のそれに較べると「格段に少ない」という。実際にかかる予算が激減するのはもちろん、予算が透明化されれば、株主や社内からの「湯水のようにお金を使って」という批判をかわすことも容易になる。

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さらにホンダは、2022年から4輪モータースポーツ活動を、これまで2輪だけに特化していたHRCに統合、移管した。別会社になれば、本体の業績うんぬんに関わらずレースだけに専心することができる。これもまた意図的になのか結果としてなのか、再参戦に向けた地ならしになったことは間違いない。

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