ホンダ緊急会見「F1復帰」は本当に必要なのか 事業としての正当性、そして「ホンダらしさ」

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ホンダ、アストンマーティン両陣営のトップが記者会見を行った(筆者撮影)

ホンダは2023年5月24日、青山本社で記者会見し「F1復帰」を正式発表した。

とはいっても、今回の発表はアストンマーティン(正式名称:Aston Martin Aramco Cognizant Formula One Team)に対する2026年からのパワーユニット供給であり、その前年の2025年まではホンダ・レーシング(HRC)がレッドブル(Red Bull Powertrains)への技術支援を行うため、大まかにいえばホンダF1活動が「継続する」形となる。

それでも、今回の発表をホンダ「F1復帰」と報じるメディアが多いのは、ホンダ本社が直接関与する、いわゆるワークス活動としてのF1参戦が2021年シリーズで終了しているからだ。

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こうしたホンダの動きに対して、各種のニュース記事でのコメント欄やSNSでは賛否両論がある。

ホンダF1ワークス活動の再始動を喜び、そしてこれからもホンダを応援しようという声がある反面、「参戦終了」から1年半ほどで復帰会見というホンダの変わり身の早さに違和感を覚える声も少なくない。

この「参戦終了」という表現は、ホンダが2020年10月2日にオンラインで開催した「FIAフォーミュラ・ワン世界選手権への参戦終了について」と題した記者会見で用いたものだ。 

同会見に参加した筆者が「参戦終了の意味」について八郷隆弘社長(当時)に聞いたところ、「撤退」や「完全撤退」という表現ではなかったが、カーボンニュートラルや「100年に一度の自動車産業の大変革期」への対応を考慮すると、F1参戦終了から「後戻りすること(=再参戦)は難しい」というニュアンスの回答だった。

「F1復帰」5つの要点

では、なぜホンダは2026年シリーズからのワークス活動復活を決めたのか。まずは、三部敏宏社長の説明を紹介する。

会見冒頭、15分強の三部社長のコメントでは、ホンダとモータースポーツ(レース)との親和性から話をスタートさせた。以下、コメントの要点を箇条書きとする。

・1950年代の国際的2輪車レース「マン島TT」参戦を皮切りに、その後さまざまな2輪/4輪レースにチャレンジすることで、「技術が人を育てる」ということをホンダが学んだ。
・特に、2輪の世界最高峰レースであるMotoGPと4輪のF1は、技術者を育てる「道場」だ。
・過酷なレースは「走る実験室」であり、そこで得た技術が量産車にフィードバックされたことで、ホンダらしいユニークで高性能な商品を生み出してきた。
・こうした観点で、ホンダにとってF1参戦は意義があるものだったが、2050年カーボンニュートラル達成に向けて研究開発のリソースを集中するため、F1ワークス活動の終了という厳しい決断を下した。
・その後、レッドブルに対してHRC(ホンダ・レーシング)を通じて2025年までの技術支援の継続を決定した。
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