また、三部社長は会見後半の記者との質疑応答の中で、「モーターなどの要素技術の研究開発は、コストもあまり大きくかからないので(参戦終了発表後も)継続していた」と明らかにした。
その理由については、いわゆるホンダF1第3期と第4期の間、2008年から2015年の「6年間のブランク」が第4期の成績不振につながった苦い経験にも触れ、「参戦終了後」の要素技術の研究開発続行の必要性を強調した。
そして、2022年8月に2026年以降のF1新パワートレイン規定が発表されると、本田技術研究所内の要素技術の研究スタッフから「この技術を使ってF1に再チャレンジしたい」という声が上がってきたという。
2022年11月にホンダが「2026年以降のパワーユニット供給者」として登録すると、複数のF1チームがホンダに興味を示し、さまざまな議論の中でアストンマーティンをパートナーとする決断をした。
アストンマーティンを選んだ理由は、「最もチャンピオンに向けた情熱を感じ、そしてF1関連施設や人材への投資を段階的に拡大していく様子を確認できた」ことであるという。
具体的には、2023年1月から両者で今後に向けた本格的な議論を始め、4月に契約の基本骨格について合意に至ったと説明される。このような「F1復帰への流れ」を聞けば、技術開発やモータースポーツという競技への参加という面で、モータースポーツファンに一定の理解を得られるだろう。
ホンダという企業の方針転換
一方で、企業経営のあり方として見ると、疑問は残る。こうした説明でホンダ車ユーザー、社員、関連企業の関係者、株主、販売店、仕入先、そして「ホンダは日本を代表する企業だ」という自負を持つ人が多い日本社会全体に対して「十分な説明だったのか」といえば、さらなる検討の必要があるだろう。
なぜならば、「参戦終了」の理由が、F1という狭い世界での規定に対するものではなく、地球規模での社会変化に対する、ホンダという企業の方針転換だったからだ。
そこで、筆者は今回の会見で三部社長に次のように質問した。
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