さらに、会見に同席したHRCの渡辺康治社長は「これまでのホンダF1活動ではあまり有効に行えてこなかったマーケティングやブランディングでもF1を有効活用する」と指摘。
これを受けて三部社長は、長年にわたりF1の認知度が低かった北米でいま、若い世代を中心に人気が急上昇し、アメリカとカナダでのF1開催数が増えている中、ホンダ量産車の主力市場で今後、F1を活用したブランディングを最大限に使っていく意向を示した。
このほか、カーボンニュートラル燃料でF1パワートレイン開発を進めることで、ホンダが掲げている2040年までにグローバルで新車100%をBEVまたはFCEV(燃料電池車)化する事業戦略が変化する可能性についても質問があったが、三部社長は、カーボンニュートラル燃料など合成燃料によって2040年以降に内燃機関を使う新車販売を続けることを「完全に否定」した。
このようにF1を事業として見た場合でも、「F1復帰」に対する投資は正当であると、ホンダは主張する。
「ホンダらしさ」とは何なのか?
最後に、「ホンダらしさ」について少しだけ触れたい。
本田宗一郎氏は「技術は人のために」という理念を持ってホンダという企業をつくり、ホンダを育てていった。その過程で、F1を筆頭とするモータースポーツが、企業としての「ホンダらしさ」を象徴してきたのは、紛れもない事実である。
だから、2020年10月2日の「参戦終了」会見以降、ホンダF1ファンのみならず、ホンダ社員などホンダに関わる多くの人が、心の中でホンダがF1を失ってしまうという「F1ロス」を体感したのだろう。
そして今、F1新規定という技術面、またスポーツカーや航空分野での量産へのフィードバック、さらには改めてホンダ技術者のスキルアップを掲げて、ワークス活動としての「F1復帰」となった。
ただし、正直なところ今回の会見現場で、筆者は次の時代に向けた「ホンダらしさ」の姿が、まだはっきりとは見えてこなかった。
「ホンダらしさ」とは何か――。
それは、自動車産業界が激動の時代に突入した今、ホンダが最も悩んでいる大きな課題なのだろう。2026年以降の「持続的なF1参戦」の中で、ホンダは「ホンダらしさ」を追い求めていくことになる。
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