ここまでの説明は、モータースポーツに対する企業の姿勢としては、ごくオーソドックスな内容だという印象を受けた。
会見会場には過去の画像や映像、また説明文などはまったく表示されず、三部社長がホンダを代表して「ホンダのモータースポーツに対する思いを語る」という形で進行した。
次に、三部社長は「F1を取り巻く環境が変わった」と指摘した。具体的に「環境」とは、 新パワートレイン規定を指す。
2026年からの新パワートレイン規定により、燃料はカーボンニュートラル燃料100%となり、また総出力電動比率が現行の20%弱から50%に引き上げられる。
そうなると、今後ホンダが進める量産車の電動化に向けた高性能モーターやバッテリーマネージメントシステム、そして現在、研究開発を進めている電動垂直離着陸機(eVTOL)などさまざまな量産技術にF1技術が活きるという。
また、カーボンニュートラル燃料は、ホンダジェットなど航空機で義務化される、SAF(サステイナブル・アビエーション・フューエル)に向けた技術につながると説明された。これらが、「ホンダがF1ワークス活動を復帰させる理由」であるという。
理解はできるが違和感もある
こうしたホンダのF1に対する意識の変化を筆者なりに表現すれば、「一度、立ち止まってこれから先を考えていたら、周囲の状況が変わり、改めて考え直してみた」ということになる。
ただ、その期間が「参戦終了」会見から約2年半、「参戦終了」から約1年半という短さに違和感がある、という人がいることも理解できる。
見方を換えれば、「参戦終了」を決めた時点で、「これまでのF1開発体制をホンダとして維持することはさまざまな視点で難しいので、次の方策が見つかるまで一定の期間がほしい」とホンダがおぼろげに考えたという面と、「カーボンニュートラルとF1との親和性が高まるタイミングを待ちたい」という意味が込められていたといえるだろう。
ただし、その時点で「次の方策」といっても、パワートレインの新規定ありきの話であり、ホンダの立場としては新規定の概要が固まるのを待つしかなかったともいえる。
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