「データを活用して優良顧客を増やす」4ステップ データドリブンマーケティング成功のポイント

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ポイント②内部コミュニケーション

次は、もう1つの重要なタスク、内部コミュニケーションについて説明しましょう。

先程の顧客コミュニケーションにおける一連のワークや施策にしても、マーケターのみが推進するものではありません。担当者から、社内の意思決定者や一緒にデータドリブンマーケティングを推進するチームメンバー、エンジニア等の専門チームにも説明する必要があります。

この全体図(像)として、マーケティングプランナーが用意すべきなのが「バウンダリーオブジェクト」です。バウンダリーオブジェクトとは、データドリブンマーケティングを推進する背景や目的、目標、施策内容や想定リスクなどを社内で共有するための資料です。

(『データドリブンマーケティングがうまくいく仕組み』から)

また、バウンダリーオブジェクト(異なる領域をつなぎ、相互作用を生み出すための媒体)は、さまざまなマーケティング関与者と目線を合わせる機能を持ちます。だからこそ同じプロジェクトではあっても、役員には役員向けの、システム担当にはシステム担当向けの複数の全体図(像)を用意する必要があります。

第一象限:意思決定者向けにつくるバウンダリーオブジェクト担当役員、事業部長などに向けたもの。概要を広範囲で理解してもらい、自信をもって意思決定をしてもらえるよう努める。

第二象限:推進チーム向けにつくるバウンダリーオブジェクト。実際にマーケティング活動を行う部門の担当者などに向けたもの。特定範囲における概要をしっかり理解してもらい、何のためにどんなことを実現していくのかを共有する。

第三象限:専門チーム向けに作るバウンダリーオブジェクト社内に限らず、外部支援企業を含むシステム担当、UX・UI担当、データ分析担当などに向けたもの。彼らが担当する特定範囲において可能な限り詳細なものを提示し、専門チームがより具体的かつ効率的な方法を生み出せるようにする。

第四象限:マーケティングプランナーが理解すべき「全体図の集合体である鳥瞰図」

『データドリブンマーケティングがうまくいく仕組み』(クロスメディア・パブリッシング)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

第四象限は、第一象限から第三象限の全体図(像)をレイヤー状に組み合わせた、いわば「鳥瞰図」ですが、これは紙の上で表現しきれるものではありません。つまり第四象限は「マーケティングプランナーの頭のなかにあるイメージ」と捉えてください。鳥瞰図を無理やり紙にまとめたところで、各スタッフは何をどう見ればいいかわからず、使い物にならないでしょう。マーケティングプランナーの頭のなかで、第一象限から第三象限の全体図(像)がどのようにつながっているのかがわかれば十分です。

第一〜第三象限のバウンダリーオブジェクトは、それぞれの内部スタッフに用意し、各自が閲覧できるようになっていればよしとします。また、それぞれのバウンダリーオブジェクトは必ずしも最初から完成度が高いものを用意する必要はありません。内部スタッフ別にラフな資料を提示しながら、議論を重ねて精緻化していく、そんな進め方が現実的です。

社内調整がうまくいかない、そんなときはバウンダリーオブジェクトで全体像を描いてみると課題解決のヒントが見つかるでしょう。

吉澤 浩一郎 株式会社シンクジャム CEO

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よしざわ こういちろう / Koichiro Yoshizawa

社員100名以上がコピーライターという国内では珍しい広告制作会社からキャリアをスタート。プランナーとして実績を積んだ後、Webインテグレーション企業にてマーケティング×IT戦略系コンサルティング業務に従事。2009年にシンクジャムを共同設立し、クリエイティブ×デジタルのハイブリッドな多能工型プランナー人材輩出を目指す。目的達成のため、つねに複眼的視点から全体像をプランニングすることを得意とする。ビジネスにおけるモットーは「何でもつなげてみよう」。

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国本 智映 株式会社シンクジャム 代表

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くにもと ちえ / Chie Kunimoto

国内IT大手企業にてシステムエンジニアとしてのキャリアをスタート。その後、Webインテグレーション企業にてマーケティングプランニングの仕事を経て独立。システムエンジニアとプランナーの経験を活かし、官公庁のプロジェクトなどで、企画フェーズでの決定内容をシステム要件定義に展開することをPMO的な役割で支援。その後シンクジャムを設立し代表となる。ビジネスにおけるモットーは、「相手を敬愛し、日本の未来が楽しくなるような新しい価値を世の中に生み出すこと」。

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