怒りを鎮める「感情ラベリング」のものすごい効果 自分の情動を認識し手なずけるテクニック

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心を乱すような情動を表現することのメリットは、ときに長く持続する。

私は先日、我が事としてそれを経験した。赤信号で止まっていたら、タクシーが猛スピードで追突してきて車は大破、私の身も危ないところだった。

それからというもの、運転していると落ち着かないようになってしまった。どこからともなく不意にまた車がぶつかってくるんじゃないかと思って、気が抜けなくなったのだ。

交通量の多い道の信号で止まるととりわけ不安になった。

しかし友人や知人に事故のことを話していたら、自分の感情が相手に伝わって薄れていくことに気づいた。話している最中に気分が落ち着くだけでなく、長期的な効果があって、徐々にトラウマを克服できたのだ。

ツイートに込められた情動の分析

話をすると有効であることを示す逸話は数多くあるし、臨床心理士もこの方法に大いに信頼を寄せている。

しかし最近まで、感情ラベリングの有効性を裏付ける科学研究はすべて実験室環境でおこなわれていて、自宅や職場、いわゆる「インビボ」で調べられたことはなかった。

だが2019年、7人の科学者のグループがおこなった実世界での刺激的な研究の結果が、一流の学術誌『ネイチャー』に掲載された。

その研究では、ツイッターのタイムラインに現れる情動を調べた。実験室での研究では被験者が数十人ないし数百人に限られるが、彼ら科学者は10万9943人のツイッターユーザーによる12時間分のツイートに込められた情動を分析することができた。

ツイートにはユーザーの実生活での考えや、身の回りで起こっていることに対する反応が表現され、それがツイッターのサーバーに保存される。

100万時間分を超すツイートに込められた情動をどうやって分析するのか?

そのような分析を自動でおこなうための分野がある。それを感情分析(センチメント分析)といい、マーケティングや広告、言語学や政治科学や社会学などいくつもの分野で用いられている。

文章をコンピュータに入力し、専用の感情分析ソフトウエアを使って、込められている情動がポジティブかネガティブか、どの程度強い感情なのかを評価する。

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