怒りを鎮める「感情ラベリング」のものすごい効果 自分の情動を認識し手なずけるテクニック

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『ネイチャー』論文の筆者たちは、VADERというプログラムを用いた。ジョージア工科大学で開発されたプログラムで、ソーシャルメディアや映画評論サイト『ロッテントマト』、『ニューヨークタイムズ』紙の社説欄や技術製品のネットレビューなどから取った数万件の文章で有効性が確認された。

VADERはそれらの文章サンプルの大部分について、訓練を積んだ人間の評価者と同じ評点を出力した。

本分析ではまず、60万人超のユーザーの10億件を超すツイートを調べ、感情をはっきりと表現した文、たとえば「悲しい」とか「すごく楽しい」といった文を含むツイートを探した。そしてそのようなツイートを投稿している10万9943人のユーザーを研究対象に選んだ。

続いてそのユーザー一人一人について、情動を表現したそのツイートの前後6時間ずつの全ツイートを取得した。そしてそれらのツイートをVADERソフトウエアに入力し、その12時間におけるユーザーの情動状態のプロファイルを作成した。

ツイートの直後から情動の強度が下がる

すると目を見張る結果が得られた。

ネガティブな情動の場合、最初は情動の強度がベースラインレベルで一定に保たれていたが、問題の情動的ツイート(たとえば「悲しい」)の前30分から1時間でネガティブ度合いが急速に高まりはじめた。

おそらく、心かき乱すような何らかの情報か事件に対する反応だろう。

しかし感情を表現したツイートの直後から、ツイートに込められた情動の強度は急激に下がっていた。

問題のツイートによって悪い感情が鎮まっていたのだ。

ポジティブな情動の場合は、もちろん感情を鎮める必要がないため、変化のカーブはもっとずっと緩やかだった。情動的なツイート(たとえば「すごく楽しい」)の前にはやはり強度の上昇が見られたが、その後に急激に下がることはなく、別の話題に移るにつれて徐々に下がっていくだけだった。

逸話や実験室での証拠から推測されていた結論が、10万人のツイッターユーザーの情動変化を追跡することで裏付けられたのだ。

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