しかし、なぜ食事の乱れが胸やけの原因になるのか。眞部医師の解説によるとこうだ。
高脂肪食は消化が悪いため、胃酸の分泌が増え、胃に長くとどまりやすい。その結果、胃酸の逆流が起こりやすくなる。また、寝る前に食事をすると、胃の中に食べ物がある状態、つまり胃酸が分泌している状態で横になるため、物理的に逆流が起こりやすい。
肥満の人はこうした食生活の乱れに加えて、お腹周りの脂肪によって胃が圧迫されやすい状態になっていることも原因となっている。
症状が軽く、食生活や肥満が原因となっている場合は、食生活の改善や減量でよくなることもある。ポイントは以下の3つだ。
寝るときには枕を少し高くすると、逆流を予防できるといわれている。また、日ごろの姿勢も意識したい。
前屈みの姿勢で悪化することも
「農業を営む方で、毎年田植えの時期になると、胸やけがひどくなるという患者さんがいらっしゃいます。前かがみの姿勢が胃を圧迫し、症状を悪化させていました。長時間デスクワークをしている場合も背中が丸くなりやすく、胸やけを引き起こす可能性があるので、姿勢を正すことを意識してほしいと思います」(眞部医師)
胃酸の逆流は、胸やけだけではなく、食道炎を引き起こすことがある。
胃酸は食べ物の消化を助けるほか、呑み込んだ細菌やウイルスなども殺すため、酸性が強い。胃の粘膜は影響を受けないように粘液によって守られているが、食道はそうした仕組みがない。このため、食道に胃酸が逆流すると食道の粘膜が傷つき、それが続くと粘膜がただれて食道炎を起こすというわけだ。
胃食道逆流症のうち食道炎がある場合は「逆流性食道炎」とも呼ばれる。
食道炎を放置すると食道が狭くなったり、粘膜が変性する「バレット食道」になったりする危険性がある。バレット食道は、食道がん(腺がん)のリスクになるといわれる。日本人にはまれだが、男性、喫煙習慣、肥満がリスク因子になるとの報告がある。
食道炎があるかどうかを確認するには、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)が必要だが、胸やけで受診しても問診と薬の処方で終わり、内視鏡検査までしてもらえるケースは少ない。
「高齢者のほか、体重が急に減った、食べ物が詰まる感じがする、便に血が混じる、黒い便が出る、貧血といった症状は、“アラームサイン”といって、食道がんや胃がんのサインでもあります。こういうケースでは、ほかの重大な病気の有無を確認するためにも、内視鏡検査を受けたほうがいいでしょう」(眞部医師)
ほかにも、狭心症や心筋梗塞などの循環器系の病気では、胸やけなどの症状が出ることもあるので注意が必要だという。
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