土佐市「移住者カフェ」ここまで大炎上した真因 「前時代的な価値観」への反発が加速している

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たまたま四国の話題ばかりになって恐縮だが、香川県まんのう町の交流施設「ことなみ未来館」をめぐる騒動も思い浮かぶ。同施設は今年3月まで、指定管理者によって運営されていたが、子ども向けのおもちゃが多数あることなどを理由に「高齢者が使いづらい」といった意見を受けて、4月から町営となった。さらに、一連の出来事をKSB瀬戸内海放送(テレビ朝日系)などの地元メディアが報じると、土佐市の事案同様に、全国的に注目を集めた。

こうした流れを考えると、もはや地域情報であっても「たかがSNS」「たかが地方局」とはいえず、全国的なムーブメントを起こすのも、特殊なパターンではないだろう。

対立する「既存の価値観」と「新たな価値観」

これらの事例に対し、「地方の価値観がアップデートされていないのでは」と、ネットユーザーから疑問視されている。ただ実際のところ、どれだけネット上で共感の声が集まろうとも、なかなか納得のいく対応を得にくいのも事実だ。

過去の事例を見ても、いずれかが態度を硬化すればするほど、ハッピーエンドから遠ざかってしまうのは想像にかたくない。SNSを通じて「バズる」ことで、より「前時代的な価値観」との対立軸が描きやすくなり、ネットユーザーの闘争心も増していくだろう。

波紋を呼んだ、「池田暮らしの七か条」はある意味、そういった態度硬化の一例だったのかもしれない。これは今年1月、福井県池田町の広報誌に「町の風土や人々に好感をもって移り住んでくれる方々のための心得」として掲載されたものだが、「これまでの都会暮らしと違うからといって都会風を吹かさないよう心掛けて」といった表現が、移住者を下に見ているのではないかと指摘された。

ふとしたボタンの掛け違いで、一方は「アップデートしない」と憤り、もう一方は「都会風を吹かせないで」と言い返す。おそらく、どちらも「よりよい生活」を目指しているのだが──。

とかく対立しがちの「既存の価値観」と「新たな価値観」だが、ぶつかり合うのではなく、また片方が折れるわけでもなく、相乗効果をねらうには、どうしたらいいのだろうか。まずはSNSをはじめとするネットの特性を理解してもらうか。なにか1つ、成功事例を生み出すところからスタートするか。

答えが出るまでは、まだ少し時間がかかりそうだが、「たかがSNS」と切り捨てずに、現状に向き合う姿勢が必要なのは間違いないだろう。

城戸 譲 ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー

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きど・ゆずる / Yuzuru Kido

1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ジェイ・キャストへ新卒入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長などを経て、2022年秋に独立。現在は東洋経済オンラインのほか、ねとらぼ、ダイヤモンド・オンライン等でコラム、取材記事を執筆。炎上ウォッチャーとして「週刊プレイボーイ」や「週刊SPA!」でコメント。その他、ABEMA「ABEMA Prime」「ABEMA的ニュースショー」などネット番組、TOKYO FM/JFN「ONE MORNING」水曜レギュラー(2019.5-2020.3)、bayfm「POWER BAY MORNING」などラジオ番組にも出演。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。
X(旧ツイッター):@zurukid
公式サイト:https://zuru.org/

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