「統一地方選挙」が盛り上がらない理由 「制度」が政治に与える影響

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政党と選挙制度について考えると、今回、無投票当選が多くなっている原因が見えてきます。自民党が圧倒的に強い今、定数が小さい選挙区で自民党に対抗できるような野党はありませんから、野党から立候補しようという候補者はなかなか出てきません。

また、定数が大きい選挙区でも、野党はうかつに候補者を擁立することはできません。同士討ちによって政党としての議席を減らすくらいなら、立候補者の数を減らして確保できる議席は確保しよう、となりがちです。結果として、有権者が選択できずに議員が決まってしまう無投票当選が生まれやすくなってしまうのです。

有権者の選択権が失われているだけではない

さらに、今の選挙制度では、無投票当選の発生によって有権者の選択権が失われてしまうだけではなく、政党が多様な有権者に浸透していくことも妨げてしまいます。

なぜなら、各政党が議席数を最大化するために候補者を絞るとすると、新しい候補者によって支持者が広がっていくことがないからです。仮に負けるとしても新たな候補者を擁立して新しい支持者を開拓していくというプロセスなしに、政党が大きくなることは難しいでしょう。政党が自らの戦略上、候補者を絞って支持者の開拓を怠ったことは、長く続いている投票率の低下傾向の原因のひとつにもなっていると考えられます。

このような問題に対しては、しばしば「立候補しやすくすればいい」などと言われます。重要な手段ではありますが、それだけでは不十分です。都道府県選挙、国政選挙と選挙区が大きくなるにつれて、熱意ある個人がみんなのために立候補することを期待して問題解決を図ろうとするのは難しくなり、政党の役割が重要になっていきます。そして、政党の戦略に影響を与える選挙制度についても考えていかなくてはいけません。

政治に不満があるなら、その制度を理解せよ!

政党や選挙について、「正解」と呼べるような制度があるわけではありませんが、今の制度のように無投票当選が頻発して有権者の選択の機会が奪われるような制度は、「納得」いく制度とは程遠いものがあります。日本では、1990年代に衆議院の選挙制度だけが変更されましたが、参議院や地方選挙を含めて、トータルで有権者が「納得」のいく制度がなかなか議論されません。

制度について知っても、うまく政治家を選ぶことができるわけではありません。しかしうまく政治家を選ぶためには、もっとよい選挙の方法を提案する政治家を見極めて、政治家を通じて「納得」できる制度を作らせるしかないのです。なかなか面倒くさいプロセスですが、民主主義をやっていく以上、このプロセスを通じて地道な改善をしていくしかありません。まずは、政治家を見極めるために制度について知ること、それが政治家に有権者からのプレッシャーを意識させる第一歩になるはずです。

砂原 庸介 政治学者

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すなはら ようすけ / Yosuke Sunahara

1978年7月生まれ。2001年東京大学教養学部卒業、東京大学大学院 総合文化研究科 国際社会科学専攻にて2003年修士課程終了、2006年博士後期課程単位取得退学。2009年同大学院より、博士(学術)。財務省・財務総合政策研究所の研究員、大阪市立大学などを経て、2013年より大阪大学 准教授。専攻は行政学、地方自治。地方政府、政党の専門家として、社会科学の立場から学術研究に注力する。傍ら、在阪の政治学者として、地方分権や大阪の地方政治について、一般への発信にも取り組む。著書に、『大阪―大都市は国家を超えるか(中公新書)』(中央公論新社、2012年)、『地方政府の民主主義―財政資源の制約と地方政府の政策選択』(有斐閣、2011年。2012年日本公共政策学会 日本公共政策学会賞〔奨励賞〕受賞)、共著に『「政治主導」の教訓:政権交代は何をもたらしたのか』(勁草書房、2012年)、『変貌する日本政治―90年代以後「変革の時代」を読みとく』(勁草書房、2009年)など。
⇒【Webサイト】【ブログ sunaharayの日記】【Twitter(@sunaharay)

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