よって、普通の人は立候補しにくい。落選するのは数人、競争率は1.1倍などといっても、知名度だけで得票できるような人はいません。ものすごい美人とか、「唯一の20代」というアピールで当選しようとする候補もいるかもしれませんが、そういうアピールをする人のために投票所まで来る有権者は、それほど多くありません。
しかも、立候補するとなるとそれまでの仕事を辞めなければいけない場合が多いので、勝つ見込みもなく気軽に立候補するのは難しいのです(市議会ですが、以下のまとめが参考になります。「ひきこもり25才上野竜太郎氏市議会選出馬の記録」)。
個人の力で選挙を戦える人は限られていて、候補者の多くは組織の力、すなわち政党の力を借りることになります。選挙のノウハウを持つ政党が候補者を支援し、なんとか当選に必要な票をかき集めるということです。
そういうわけで、政党には重要な役割を果たすことが期待されるのですが、実は、政党の力は、今現在、十分に発揮されていません。選挙制度が問題を抱えているためです。
候補者を増やすと議席が減る?
原因は、選挙区の定数が2以上で、有権者は1人1票持ち、投票用紙に候補者1人の名前を書き、その票を集計して上位者から順番にあらかじめ決められた定数まで当選する、いわゆる中選挙区制という選挙制度です。この制度の下では、定数が大きくなると、政党内での「同士討ち」が発生することがあります。それが、政党としてのまとまりを弱めてしまうかもしれないのです。
政党が最もおそれる事態は、1人追加で立候補させることにより、政党として当選者が減ってしまうことです。おかしな話ですが、中選挙区制では、ある政党が候補者を増やすと、その政党の議席が減ってしまうというケースがありうるのです。
たとえば新しい候補が、もともと立候補する予定だった同じ政党の候補の票を持って行ってしまうことで、当選者が減る場合です。同じ政党から立候補した候補者は、有権者から見ると似たような候補者ですから、同じような考え方の有権者たちの票を食い合ってしまうことは少なくありません。みなさんも、まず投票する政党を決めてから候補者を選ぶということをしていませんか?
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