中国のスマートフォン大手のOPPO(オッポ)が、スマホ用半導体の独自開発から撤退を決めたことがわかった。同社は5月12日、総裁弁公室(社長室に相当)の名義で社内通知を出し、「半導体開発プロジェクトの『ZEKU』を中止する」と社員に伝えた。
その理由について社内通知は、「グローバル経済とスマホ市場の不確実性が高まるなか、会社の長期的発展の(前に立ちはだかる)困難を克服するため、経営戦略を見直す必要があった」と説明している。
ZEKUの中止はすなわち、OPPOの半導体設計子会社である哲庫科技の解散を意味する。財新記者の取材によれば、哲庫科技のエンジニアは主に上海、北京、そして海外の拠点で勤務。半導体開発チームの全体規模について、OPPOは2022年12月に「2000人を超えた」と明かしていた。
財新記者の取材に応じた哲庫科技のエンジニアによれば、今回の決定により半導体開発チームは全員解雇されることになった。対象者には、月額賃金に勤続年数を掛けた金額に、さらに3カ月分の賃金を加えた経済補償金が支給されるという。
(訳注:中国の労働契約法は、会社都合による従業員の解雇について、月額賃金に勤続年数を掛けた金額に1カ月分の賃金を加えた経済補償金を支払うよう定めている。現実には、労働争議などを予防するため補償金を上乗せするケースが少なくない)
「経営陣の将来悲観の表れ」
OPPOの社員にとって、半導体の独自開発からの撤退は寝耳に水だった。「社内通知が出る直前まで、すべての仕事がふだん通りに進んでいた」。前出のエンジニアは、そう戸惑いを隠さない。
唐突に見える決断の背景には、どんな事情があったのだろうか。OPPOの内情に詳しい関係者は、財新記者の取材に対して次のように語った。
「回線幅4nm(ナノメートル)のプロセス技術を前提に設計した(次世代の)半導体の量産には、まだ一定の時間がかかる。そんななか、半導体開発チームの中核を担うエンジニアが相次いで退職し、プロジェクトの進捗が滞っていた。それが大きな理由の1つかもしれない」
2022年以降、世界のコンシューマーエレクトロニクス市場では(インフレ高進などの影響で)需要が大きく縮小し、スマホメーカーの経営を圧迫している。市場調査会社のカナリスのデータによれば、2022年の世界のスマホ出荷台数は前年比12%減少。OPPOに限れば同22%も落ち込んだ。
冒頭の社内通知のなかで、経営陣はプロジェクトの中止は「非常に困難な決断だった」と心情を吐露している。あるアナリストは、OPPOの半導体開発からの撤退について「経営陣がスマホ市場の将来を悲観的にとらえている表れだ」との見解を示した。
(財新記者:翟少輝、張而弛)
※原文の配信は5月12日
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