アメリカ商務省は3月21日、アメリカ本土での半導体の生産や研究開発を支援する「CHIPS・科学法」の施行規則案を発表した。同法は2022年8月にジョー・バイデン大統領が署名して成立し、巨額の補助金を含む投資総額は5年間で2800億ドル(約36兆9544億円)を見込む。
今回の施行規則案には、アメリカ政府が半導体メーカーなどに供与する補助金の審査プロセスに「国家安全保障条項(ガードレール条項)」が追加された。それにより、補助金を受け取る企業は中国を含む対象国で生産規模を拡大したり、共同研究を行ったりするのが制限される。
中国以外の対象国はロシア、イラン、北朝鮮だ。「CHIPS・科学法は本質的に国家安全保障(を強化するため)の法律だ。ガードレール条項は悪意を持つ者が先端技術にアクセスするのを防ぎ、アメリカおよび同盟国に対する脅威を取り除くのに資する」。アメリカ商務省のジーナ・レモンド長官は、施行規則案の発表声明のなかでそう述べた。
CHIPS・科学法には、半導体産業や研究機関に対する資金援助のほか、半導体および製造装置への投資を対象にした25%の税額控除などさまざまな支援措置が盛り込まれている。そのうち、半導体メーカーなどに直接供与される補助金は527億ドル(約6兆9553億円)に上る。
先端技術の規制はさらに厳しく
アメリカ商務省によれば、ガードレール条項には、補助金を受け取る企業が順守しなければならない3原則がある。第1に、アメリカ以外の国家からの資金援助を受けてはならない。第2に、補助金を受け取った後の10年間、対象国への投資は厳しく規制される。第3に、(国家安全保障上の)懸念がある外国の企業や組織との共同研究や、技術のライセンスは規制される、というものだ。
注目すべきなのは、ガードレール条項が(先端技術だけではなく、1世代以上前の)成熟技術による半導体製造にまで規制を広げたことだ。
例えば、補助金を受け取る半導体メーカーが中国に持つ(成熟技術を用いた)既存工場の製造設備を更新する場合、生産ラインを1本以上増設したり、生産能力を10%以上増やしたりする場合には規制の対象になる。
先端技術による半導体製造には、さらに厳しい条件が課された。補助金を受け取る半導体メーカーが、中国などの対象国で先端技術を用いた生産ラインの新設や増強を行う場合、投資額が10万ドル(約1320万円)を超えるか生産能力が5%以上増えるケースでは、アメリカ商務省が補助金の返還を要求できる。これは事実上、中国における先端技術の生産ラインの新増設を禁止したに等しい。
(財新記者:杜知航)
※原文の配信は3月22日
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