中国のインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)は3月16日、同社が開発したAI(人工知能)チャットボット「文心一言(アーニー・ボット)」の発表イベントを北京の本社で開催した。
イベント会場では、文心一言による文学作品の創作、ビジネス文章の作成、数理的ロジックによる推算、中国語の理解力、(画像、音声、文字、数値など複数種類の情報を統合的に処理する)マルチモーダルな回答生成などのデモンストレーションが披露された。
ただし、それらは事前に録画された動画によるもので、文心一言を支える大規模言語モデルについての詳しい説明もなかった。
文心一言のお披露目は、百度がオフラインで開催したイベントのなかで近年最大級のものだった。同社の創業者で董事長兼CEO(会長兼最高経営責任者)を務める李彦宏氏が、公開のイベントでは約2年ぶりに登壇。約30分のスピーチを通じて文心一言の能力を自ら解説し、大規模言語モデルの将来や百度の取り組みについても自身のビジョンを語った。
なお、文心一言の一般公開について百度CTO(最高技術責任者)の王海峰氏は、イベント当日の3月16日から招待制による一部ユーザーへのテスト公開を始め、その後により多くのユーザーに門戸を広げると述べた。
「まだ投資する時期ではない」
だが、今回のイベントで百度がリアルタイムのデモンストレーションを行わなかったことは、文心一言に対する資本市場の期待感に水を差した。香港証券取引所に上場する百度の株価は、3月16日に一時9%急落。同日の終値は前日比6.36%安の125.1香港ドル(約2131円)で引けた。
アメリカのAIスタートアップのオープンAIが開発した「ChatGPT」が世界的な注目を集めるなか、百度は類似のAIチャットボットの開発を進めていることを2月7日に明かした。それが文心一言にほかならない。
百度は3月中に社内テストを完了して一般公開すると宣言したため、資本市場の期待が急上昇。同社の株価は2月6日の終値の140.9香港ドル(約2400円)から、翌日には一時18%高の166.3香港ドル(約2833円)まで上昇した。
「2022年12月頃から、百度がAIチャットボットを開発中との噂が流れ、市場関係者の多くは同社の持つ(AI技術の)リソースは良好だとみていた。しかし、百度の業績数字に文心一言の貢献が目に見える形で反映されるようになるまでには、相当な時間がかかる。長期投資を生業にしている投資家にとって、まだ手を出す時期ではない」
財新記者の取材に応じた香港のヘッジファンドの関係者は、自身の見方をそう語った。
(財新記者:劉沛林)
※原文の配信は3月16日
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