中国のAI(人工知能)スタートアップ企業、思必馳科技(AIスピーチ)の上場計画が挫折したことがわかった。同社は上海証券取引所のハイテク企業向け新市場「科創板」への上場を申請していたが、同取引所の上場審査委員会が5月9日の審査会議で、「IPO(新規株式公開)の要件を満たしていない」と判断したためだ。
AIスピーチの上場申請を上海証券取引所が受理したのは、2022年7月のこと。IPOの目論見書によれば、同社は科創板上場を通じて10億3300万元(約202億円)を調達し、対話型AIのプラットフォームの構築や業種別のアプリケーション開発、(あらゆるモノをネットにつなぐ)IoTスマート端末の開発、研究開発センターの建設などに投じる計画だった。
その後、上海証券取引所はAIスピーチに対する3回のヒアリングを経て、同社のIPOを上場審査委員会に上程した。同取引所の開示文書によれば、5月9日の審査会議では、AIスピーチのコア技術の競争力や、売上高の成長予想の合理性、損益の赤字が続くなかでの経営の持続性などに関する質問がなされた。それに対し、AIスピーチは審査委員を納得させる回答ができなかったもようだ。
リソースの限界を自認
2007年創業のAIスピーチは、音声認識技術や音声合成技術を用いた対話型AIの開発を手がけている。独自設計のAI半導体から、それを搭載した推論処理モジュール、(学習済みのAIモデルを提供する)ミドルウェアプラットフォーム、(用途別の)アプリケーションやカスタマイズに至るまで、垂直統合型の開発戦略をとっている。
目論見書によれば、同社の2022年の売上高は4億2300万元(約83億円)と、2020年の2億3700万元(約46億円)から2年間で約1.8倍に拡大した。しかし損益はずっと赤字であり、2022年には2億6400万元(約52億円)の純損失を計上した。
注目に値するのは、ChatGPTに代表される大規模言語モデルを用いた生成AIが投資家の注目を集めるなか、AIスピーチが自社のリソースの限界を事実上認めていたことだ。
「生成AIの大規模言語モデルの機械学習は、膨大な量の計算力とデータを必要とする。わが社の研究開発投資の余力は限られており、短期的には多様化する市場のニーズに十分対応できないリスクがある」。AIスピーチの(上場審査委員会に提出された最終版の)目論見書には、投資リスク項目の1つとしてそう記されていた。
(財新記者:劉沛林)
※原文の配信は5月10日
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